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私は、九州某県にて様々な介護事業の経営をしながら、ご家族のカウンセリングなども主催しています。先日の記事『プロの介護職は、暴力やハラスメントを受けている』を読んで、感じるところがあったので、こうして読者投稿をさせていただくことにしました。
つい最近、スタッフとの研修の中で、該当率100%になった質問があります。それは「利用者(要介護者)から暴力やハラスメントを受けたことがありますか?」というものです。私自身を含めて、スタッフの全員が、利用者から暴力やハラスメントを受けたことがあったのです。
実は、介護事業者の側からすると、この話は、とてもオープンにしにくいのです。「それを我慢するのが、介護職の仕事でしょう」という意見を持っているご家族も少なくありません。「その程度のことで、ハラスメントと騒ぐな」といった逆ギレもあります。
一般には知られていないと思いますが、現場からすると、介護職が受ける暴言や暴力の数は、尋常ではありません。すでに緊急事態であることを理解してもらいたいです。事情はいろいろあると思います。認知症の症状のせいと言われてしまえば「我慢しなくては」と感じます。
介護職は、虐待に関する研修を受けています。しかし、そうした研修のほとんどは、介護職が虐待の加害者にならないようにするものがほとんどです。その内容も「いつでも大きな気持ちで優しさを忘れず、多少の暴力やハラスメントは我慢してくださいね」というものになりがちです。
ですが本当は、介護職が利用者から暴力やハラスメントを受けないようにするためのノウハウに関する研修も必要だと思います。しかし、そのような研修があるという話は、あまり聞いたことがありません。
介護職が受ける暴力やハラスメントは、利用者からのものだけではありません。実は、雇い主となる介護事業者の経営層からのものも少なくないと感じています。介護保険制度が始まったことによって幕を開けた介護業界は、そこからまだ20年も経っていない、若い業界なのです。
正直、ひとつの企業としては未熟な面も多く、スタッフの育成の前に、経営層の育成が必要な業界と思っています。ちょっとしたトラブルがあった場合、介護業界の経営層の少なからぬ人々は、現場の介護職を攻撃対象にします。
よく、介護職が介護事業者のところを退職するのは「日頃のストレスがたまったことが原因」と報道されますよね。ただ、そのストレスというのは、なにも利用者からきているものだけでなく、職場の上司である経営層からのものも大きいと考えるべきだと思います。
ここまで、介護職を擁護してきましたが、介護職による利用者の虐待は、起こってはいけない事です。それに、ニュースとして取り上げられるのは、全体で起こっている虐待の氷山の一角にすぎません。
ただ、こうした虐待を減らすためには、介護職に対する、介護職が虐待の加害者にならないための研修だけでは不十分だと思うのです。介護に関わるみんなが、他者に対して暴力やハラスメントをしないという、当たり前のことを学んでいかないとならないのです。その点では、介護職は、もっと守られるべきだと思っています。
私が自分で介護事業者を立ち上げると決めた理由の一つに、介護職がきちんと仕事の結果を手にすることができ、暴力やハラスメントを受けることがない職場を作りたかったということがあります。
私自身が経験してきた「介護職のほうが周囲から受ける虐待」を、なんとかしたいという気持ちを、今も強く願っています。そして、願うだけでなく、実際に自分が行動しなければ、現状は変わりません。そのためには、介護職が受けている暴力やハラスメントを、世間の人々に知ってもらうための活動をしていくつもりです。
KAIGO LAB の皆様が、記事として取り上げていらっしゃる内容は、今後の介護業界を変えていく、大きな力になると思っています。きれいごとの通用する仕事などないというのが私の考えですが、とくに介護業界は、フンワリ、やわらかなイメージで、現実から目をそむけながら、介護職の確保を目指しているように感じてなりません。
こちらの記事から、介護業界の現実を理解する人々が増え、具体的な改善点を考え、そのための行動をおこす人々が増えて行くことを希望しています。現実から目をそむけない記事を、これからも胸を熱くして待っています。
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