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【介護の心理学6】レディネス(readiness)

レディネス(readiness)

レディネス(readiness)とは?

「Are you ready?(準備はいいかい?)」というときの「ready」に、状態を表す接尾辞「ness」がついて「readiness」です。直訳すれば「準備ができている状態」という意味になります。

心理学において、この「レディネス(readiness)」という言葉が用いられるときは、もう少し限定的な意味になります。心理学において「レディネス」とは、人間の学習に関する重要な概念なのです。

たとえば、赤ちゃんに自動車の運転方法を教えても仕方がないでしょう。小学生に、上司への報告の仕方を教えても意味がありません。普通は、新入社員に対して、定年後のセカンドライフに関する研修はしません。

人間の学習には、効果の出やすいタイミングがあるということです。もう少し厳密にいうと、効果的な学習がなされるには、その内容を習得するための経験・知識・心身の成熟といった「素地」ができている必要があります。「準備ができている状態」=「レディネス」が求められるというわけです。

心理学者・小児科医のアーノルド・ゲゼル(Arnold Gesell)が提唱した考え方とされ、主に、子供の教育について考えるときに、よく参照されます。

介護の文脈における「レディネス」を考える

介護の文脈にも「レディネス」と言えるものがありそうです。以下、3つほど、介護の現場における「レディネス」の問題を挙げて考えてみます。他にもたくさんあるので、時間があれば、考えてみてください。

1. 介護がはじまったばかりの人には、介護は難しすぎる

介護は、学問と言ってよい奥深さをもっている、複雑な知的体系です。しかし、ほかの学問とは異なり、体系が整理されてはいません。介護について効果的に学習を進めるためのカリキュラムは、介護の専門職を育成するもの以外は、ほとんど存在していないと言ってよいでしょう。

介護に関することは、自分が介護をすることにならない限り、興味をもって学ばない人がほとんどです。本当は準備をしておいたほうがよいのですが、それができる人は多くはありません。そして、介護はある日突然、はじまります。

急に、非常に複雑で、かつ「このように学んでいけばよい」という学習のプロセスも明らかになっていない介護に突入するのです。介護保険制度、自治体の窓口、民間の介護サービス事業者、主治医や看護師、移乗の基本や排泄・入浴介助、便利な介護グッズ、認知症、バリアフリー、看取り・・・学ぶべきことは、たくさんあります。

このとき、本当は、それを学ぶ前に、こっちを知っておかないと効率的ではないということもたくさん出てきます。「レディネス」がないままに、知識を詰め込もうとするため、パニックになってしまいます。

2. 死に関することは、個人差が大きい

看取りにせよ、自らの終末期にせよ、死について考えることには「レディネス」の問題が大きく関わってきます。ここは、個人差がとても大きいと感じます。

若くても、死と向き合える人もいれば、高齢者でも死を直視するのが苦手という人もいます。それは単純に、生死について学問的・哲学的に考えてきたかどうかではなさそうです。死の専門家でも、いざ自分の死が近くなると、取り乱すこともあるからです。

実体験を通して、死生観のようなものを、どのように構築してきたかが「レディネス」を決めているように思います。そして、看取りはもちろん、自分自身の死も「レディネス」のあるなしによらず、その現実は容赦なく襲ってきます。

この分野については、サナトロジー(死学)という学問があります。これを学べば、それで死を受け入れられるようになるわけではありません。ただ、死に対する「レディネス」が、どのようなプロセスを経ていくのかといったことは学べます。

3. 介護職がマネジメントを学ぶときにも混乱がある

新卒から介護の世界で働いている人も増えてきています。はじめは、介護の現場で、身体介助や生活介助などをすることが多いでしょう。しかし、数年もすれば、徐々にではありますが、マネジメントに関わるようになっていきます。

ここで、マネジメントの考え方に違和感を持つ若手人材も少なくないようです。マネジメントは、なんだかんだで、戦争や企業間競争のために発達してきた学問です。そこには、自分の競争優位性を確保して、敵に勝つという思想があります。

これに対して、新卒から介護の世界に飛び込む人の多くは、社会福祉を学んでいます。これは、マネジメントとは真逆とも言える思想をベースにした学問です。敵に勝つための学問と、他者を受け入れるための学問の間にあるギャップは、相当なものなのです。

介護職にある若手は、新卒で介護の世界を目指すというメンタリティーからしても、そもそもマネジメントを学ぶときの「レディネス」に悩むタイプである可能性が高いのです。

「金儲け」なんてやりたくないと思っていても、いずれは管理職になっていきます。管理職になれば「金儲け」なんてやりたくないと考える若手に対して給与を支払っていくために「金儲け」について詳しくならないといけません。

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