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【介護の心理学24】セルフ・ハンディキャッピング(self-handicapping)

カリギュラ効果

セルフ・ハンディキャッピング(self-handicapping)

試験前に「ぜんぜん、勉強してないよ・・・」といったセリフを友達に話したことがある人は多いでしょう。あの時の背景には、結構、根深い心理学的な傾向が存在しています。この傾向の存在を理解しておくと、なかなかに有効なこともあります。

まず「ぜんぜん、勉強してないよ・・・」というセリフは、たとえ試験で悪い得点をとってしまったとしても、後で言い訳ができるようにするための防衛になっているでしょう。さらに、それで良い点をとった場合は、勉強していないのにできたということで、自分の能力の高さを周囲に示せます。

こうして、自分自身の自尊心を守るために、あえて、自分にハンデを課してしまう行為を、特にセルフ・ハンディキャッピング(self-handicapping)と言います。ここまでであれば、飲み会のネタ程度の話なのですが、ここからが恐ろしいところです。

無意識のセルフ・ハンディキャッピング

こうしたセルフ・ハンディキャッピングは、それと意識して行なっている分には、ある意味で戦略的です。しかし、実際には、無意識のセルフ・ハンディキャッピングによって、本来であれば、しっかりと努力すべきところが、スキップされてしまっている可能性もあるのです。

例えば、試験前になると、急に部屋の掃除をはじめてしまったりしたことはないでしょうか。勉強しないといけないことがわかっているのに、急に、マンガ全巻を読み切ってしまったりしたことはないでしょうか。

こうした、パフォーマンスのためには明らかに間違った行動をとってしまうのは、本番への不安に対して、ダメだった場合の防御を、無意識にも準備してしまっているからと考えられています。

介護離職とセルフ・ハンディキャッピング

介護の文脈においても、こうしたセルフ・ハンディキャッピングが混入することがあるはずです。すぐに思いつくのは、介護離職にもつながる仕事からの逃避です。もちろん、本当に辛い介護によって離職するケースがあることは当然であり、全ての介護離職がそうだというつもりはありません。

ただ、日々の仕事は厳しく、目標設定では、高い目標を設定されることが常です。そうした環境においては「介護をしながら仕事をしている」ということが、セルフ・ハンディキャッピングとして働いてしまう可能性があるというところを認識する必要もあるでしょう。

具体的には、大型の仕事が入っているのに、本当はそこまで自分でやる必要のない介護をしてしまうといったことです。こうした形で、無意識のセルフ・ハンディキャッピングが動いてしまうと、本人も本当は望んでいない介護離職に至ってしまうかもしれないのです。

そうして介護離職までしてしまった場合、無意識には、仕事でパフォーマンスを出すということが恐くなっているわけですから、復職も簡単ではなくなります。最悪は、ミッシングワーカーになってしまうかもしれません。

繰り返しになりますが、介護が本当に大変で、仕事にならないということは十分にあり得ます。しかし、介護離職をしてしまえば、年収は男性で4割減、女性で半減するというデータがあります。また、復職までには1年以上かかる人が最多なのです。

介護離職を決断してしまう前に、自分の今の状況が、客観的に見てどれくらい重たい介護になっているのか、客観的に見て両立がどれくらい難しいのかを認識することが大事です。誰にも相談しないままに介護離職をすることだけは、どうしても避けたいところです。

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