KAIGOLABの最新情報をお届けします。
美容室へ行って、髪を切りに行くとき、どのようにオーダーしていますか?どんなデザインの服をよく買いますか?ヘアスタイル、化粧やファッションには、それぞれこだわりがあり、価値観が表現されています。しかし、年齢を重ね、要介護の状態になってしまうと、オシャレを楽しむことが難しくなっていきます。
「外見は一番外側の内面」とも言われるとおり、オシャレも人生の一部です。介護職員は、その人らしい生活を本人と一緒に取り戻していく専門職です。本来ならば、介護職員は、要介護者に対して、オシャレがまたできるように働きかけていく必要があります。
しかし、高齢者の介護現場では、オシャレのサポートは後回しになってしまいがちです。また、認知症に苦しむ人の場合は、自分がどのようなオシャレをしたいか、言葉で表現するのが難しくなってしまいます。
筆者が5年前に出会ったSさんという利用者は、とてもオシャレな人でした。月に2回はヘアカット、カラー、顔そりをしていました。化粧品は高級なものを使い、洋服もたくさん持っていたのです。Sさんの昔からの友人は「Sさんは、ファッションリーダーだったよね」と語っていました。
5年たって、Sさんは認知症が進行し、要介護度は5になりました。それでも、行きつけの美容室に行くと、美容師さんが、Sさんの好みをしっかり把握してくれているので、安心してお任せできました。
でも、もし、行きつけの美容室に行けなくなったらどうなってしまうのでしょうか?彼女のこだわりがきちんと代弁できなければ、適当にカットされてしまうのでは、という危機感を抱きました。そこで、要介護の状態になっても、1人ひとりのいままでの人生のなかで形成されたオシャレができるようにと、イベントを企画しました。
このような想いが込められたイベント『Back to the beauty!』は、2017年8月1日(火)、ケアワークアカデミーで開催されました。主催は、美容関係の会社であるFIOLE、ONE MORE Uと小規模多機能型居宅介護ユアハウス弥生です。
当日は、7名の美容師と2名のメイクアップアーティストにご協力いただきました。参加者は、ユアハウス弥生の利用者が7名と利用者の家族です。利用者が本当になりたい姿に当日なれるように、介護職員が、一人ひとりのライフヒストリーを聞き取り、昔の写真を集めました。
イベントの冒頭には、利用者のライフヒストリーをまとめた動画を上映し、介護職員がそれにあわせてプレゼンをしました。そして、プレゼンを基に、利用者、美の専門職である美容師、介護職員がビューティー・カンファレンスを実施しています。
「若い頃流行っていたヘアアイテムの活用をまたしてみたい」、「以前のこだわりのスタイルに近付けたい」、「憧れの髪型に挑戦したい」、「イタリア旅行へ行った時の髪色が良かった」等々、利用者1人ひとりが自己主張をし、それを美容師がくみ取りました。そして、7組が一斉に施術を行いました。
美容師は、ライフヒストリーを聞くことで、利用者に対する尊敬の気持ちを抱いたそうです。参加者の想いを真摯に受け止め、表現をしていました。施術後、利用者の個性がより引き立っていました。表情も一段と明るくなっていたのです。
歳をとったから、オシャレをしなくても良いなんていうことはありません。認知症なんだから、オシャレをしなくても良いということもありません。自分のなりたい姿になれることの幸せを一緒に感じることになった1日でした。
※本稿へのイベント写真の掲載に関しては参加者の合意を得ています。
KAIGOLABの最新情報をお届けします。