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宝くじに当たることと、下半身不随になることは、かなり違った未来です。この2つの未来を選べるのならば、誰もが、宝くじに当たる未来を選ぶと思います。それは、そのほうがより幸福だと思われるからでしょう。
しかし、ハーバード大学心理学教授のダン・ギルバート氏によれば、宝くじに当たった場合と、下半身不随になった場合で、その事件から1年後の段階においては、幸福度に差はないのです。これは、多くの人にとって、かなり驚きの事実だと思います。
この結果の背景には、人間は、未来予測(疑似体験)をするとき、結果の違いを、現実以上に大きく考えてしまうという心理的な特徴の存在があります。現実の私たちは、3ヶ月以上の過去に起こったことを、それほど気にしない生き物なのです。
人間には、心理的な免疫システムのようなものがあるそうです。この免疫システムは、私たちが生きている今という時間が、より幸せなものに感じられるように働きます。脳科学的には、幸せは、見つけ出すものではなくて、作り出すものだということです。
ここまでの話は、ダン・ギルバート氏TEDで行ったスピーチの動画で、より詳しく知ることができます。このスピーチは、TEDの中でも、かなり人気のあるもので、世界中で参照されています。少し長めのスピーチ(22:02)ですが、ぜひ、見ておくべきものです(注:字幕が出ないときは、右下の設定の隣にある字幕ボタンをクリックしてください)。
この心理的な免疫システムは、選択肢が少ないときにこそ、効果的に働くそうです。選択肢が多いと、自分が選ばなかった未来を過大評価してしまい、自分が選んだ選択に自信が持てなくなるというのが、その原因です。
もう逃げ場がない、目の前にあることで頑張るしか選択肢がないというとき、それは不幸とは言えないのです。親の介護で出世をあきらめることになっても、退職して条件の悪い職場しかなくても、そこから1年後には、それ以前と、幸福度は変わらない可能性が高いということです。
もちろん、いかなるところでも、自分なりの最善をつくす必要はあると思います。また、介護で虐待に至ってしまうケースのように、これ以上前に進める選択肢がないような状態では、この話は通用しないので注意も必要です。
これと同様な話として、有効期限が迫っているクーポン券は、まだ十分な有効期限の残っているクーポン券よりも利用されやすいことがわかっています。使わないでとっておくという選択肢がなくなるからです。ということは、私たちは、人生の晩年になればなるほど、自分の選択できる範囲ではあっても、より積極的になれるのです。
親の介護によって自分の選択肢がせばまり、さらに自分自身が高齢化するような未来は、想像もしたくないかもしれません。しかし私たち人間は、そうした限定の中にあってこそ、自らの知らない自分自身に出会えるという面もあるわけです。
繰り返しになりますが、今回のような話は、本当に厳しい介護の真っ最中にある人にとっては、意味のないものかもしれません。あくまでも一般論ですし、例外として、こうした理論とは異なる反応をするケースもあるでしょう。
それでもなお、自分が恐れている未来が現実のものとなったとき、私たちは、自分で想像しているような不幸な状態にはならないという科学者たちからのメッセージは大切なものです。そして、そうした場面においては、落ち込む必要はありません。まずは1年という節目を目指して頑張ってみることが大事なのでしょう。
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