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松葉杖(まつばづえ)とは、足になんらかの怪我や障害を抱え、歩行が困難な人のための道具(歩行補助機器)です。日本では、この道具が松葉のように二股に分かれている形状から、松葉杖という名前で親しまれてきました。
現在の松葉杖のデザインは、150年ほど前のアメリカ南北戦争(1861〜1865年)のころから(ほとんど)変わっていないそうです。そうした背景がある中、ついに新たな松葉杖のデザインが出てきて、話題になっています。
紹介動画に寄せられているコメントを読むと、賛否両論でした。その中でも特に、理学療法士(physical therapist)からの「面白いけれど、大切なのは、既存の松葉杖を正しく使うことであって、高額で奇抜なデザインではない」という指摘は重要でしょう。
そもそも、150年も変わらないデザインということは、それだけ信頼性が高く、変化の必要がない優れたものであることの証明でもあります。同時に、正しい方法でも、我慢して使っていた人もいるわけで、より多様な高齢化社会においては、やはり改善すべきところもあるはずです。
特に、過去の松葉杖は、手、手首、脇の下を強く圧迫するデザインになっています。このため、これらの部分に障害を持っている人には使いにくいという指摘には、疑えない真実があるでしょう。そして、話題になっている新しい松葉杖は、この点を改善するものになっています。以下、その紹介動画(英語)になります。
先の理学療法士によるコメントは、とても大事なものです。何でも新しくすれば良いというものではないからです。しかし、今回話題になっている松葉杖は、手、手首、脇の下の圧迫に耐えられない人にとっては朗報です。
考え方として注意したいのは、こうしたデザインも、課題解決の手段であって、それ自体は目的ではないということです。特定のデザインが、具体的にどのような課題を解決するものなのかに焦点をしぼって議論をしなければ、この社会は前に進んで行きません。
特に、人間には避けがたく現状維持バイアス(今の状態を維持する傾向)が備わっている点にも注意が必要です。人間はそもそも、それが「新しい」というだけで、無意識のうちにも反対しやすい存在なのです。
この新しい松葉杖のように、これからも、私たちの社会には、次々に新しい道具が紹介されていきます。それらを、この社会に根付かせるかどうかは、私たち消費者の選択にかかっています。だからこそ私たちは、こうした道具の目的を意識しつつ、また、現状維持バイアスから自由でなければならないのです。
※参考文献
・Tech Insider, “Crutches are finally getting a redesign after 150 years”, April 18, 2016
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