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介護業界は2040年までに約3倍の規模(給付費29兆円市場)になる

介護業界は2040年までに約3倍の規模(給付費29兆円市場)になる

介護保険給付費の増大

介護保険給付費とは、国民から徴収した税金や介護保険料から、介護事業者に対して支払われたお金の総額です。介護を必要とする人が増えれば増えるほど、また、必要となる介護が重たくなればなるほど、この介護保険給付費もまた増えていきます。

介護保険給付費は、もとはと言えば、国民のお金です。そんな介護保険給付費が増えて行くということは、それぞれの国民が支払っているお金も増えるということを意味しています。今後、介護を必要とする人が増えることは避けられないので、増税や介護保険料増額もまた必然ということになります。

2018年度には、この介護保険給付費は、約11兆円でした。そして団塊ジュニア世代が65際を突破している2040年には、介護保険給付費は約29兆円にもなると予想されています。やや大げさに言えば、これまでの3倍もの負担が必要になるということです。

今後20年で3倍にも成長する市場はそうない

日本は、少子化と人口減少によって、今後、経済規模としては衰退して行くことが(ほぼ)確定しています。もちろん、そうして経済規模が縮小するからと言って、個々の国民の生活が貧しくなるかどうかはわかりません。経済規模が縮小しても、個別には豊かになれる可能性も残されています。

そうした中で、今後20年で、介護市場が3倍に迫る勢いで成長して行くことは、数少ない希望でもあります。この市場の成長が、介護業界における事業を活性化し、そうした事業の中から輸出産業が生まれてくれば、日本の経済規模の縮小を補えるだけのお金が、世界からもたらされるかもしれないのです。

ただ、例によって、こうした成長から富を得られる人とそうでない人に二極化してしまうと、国は豊かになりません。当たり前のことですが、富のより適切な再分配に向けて、税の徴収と使い道に関する部分では、まだまだ改革が求められることは間違いありません。

本当に3倍になるかどうかが心配

そうした中で、一つ大きな心配ごとは、この市場が本当に3倍になるかという部分です。介護を必要とする人が増えるのですから、ニーズは、十分にあるでしょう。問題は、そのニーズを埋めるのは、国民が支払う税金と介護保険料であるという部分です。

国民の側に、増税と介護保険料増額に耐えられるだけの収入があるかというと、非常に厳しいと言わざるを得ません。国民の平均所得は伸び悩むどころか、徐々に減ってきてしまっています。そこに増税と介護保険料増額が重なってくれば、国民の生活は極端に苦しくなってしまいます。

そうして、国民が自分で自由に使えるお金が減ってしまえば、どうなるでしょう。物が買われなくなるのは当たり前ですが、それ以上に深刻なのは、国民が使える自己投資(資格取得などのための費用)の金額が下がっていくということです。

介護が国民全体で意識される時代まであと少し

こうして3倍にまで膨れ上がろうとしている介護業界は、世間の注目を(やっと)集め始めてきています。徐々にではあっても、企業の意識は確実に変化してきており、仕事と介護の両立に対して投資を始めています

日本中の誰もが、自立支援としての介護の意義を正しく理解し、介護に対するイメージを変化させるまでは、むしろ時間の問題です。より多くの人が介護業界との接点を持つようになりますから、わざわざ宣伝をしなくても、国民の意識は変化するでしょう。

私たちは、そうした出現しつつある未来において、それぞれがどのような立場を担って行くのかを考えるべき時にあります。市場は3倍になりますが、だからと言って、介護業界の全ての企業の売り上げが3倍になるわけではありません。この成長を取り込むための激しい競争が始まっているのです。

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