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しぼられる生活保護、それでも高齢者世帯だけは増加

しぼられる生活保護、それでも高齢者世帯だけは増加

高齢者世帯の生活保護需給が過去最多に

2019年4月時点での、日本の生活保護の状況が、厚生労働省より発表(2019年7月3日)されています。それによれば、生活保護の需給世帯の総数は、前月よりも約2,000世帯減って163.4万世帯でしたが、高齢者世帯だけが約1,700世帯増えて89.5万世帯となっています。

気になるのは、生活保護の総数が減っていることです。日本の二極化は進んでいるはずで、生活保護の総数が減らせるような、そんな経済状況にはないはずなのです。それにも関わらず、生活保護の総数が減っているというのは、不自然なことのように思います。

逆に、そうして財源がしぼられていく生活保護にも関わらず、高齢者世帯だけが増えていることには、高齢者世帯の置かれている厳しい現実を示しているでしょう。同時に、生活保護を受けるべきなのに、こうした高齢者世帯の存在によって受けられなくなった非高齢者世帯の苦しみを考えると暗い気分にもなります。

生活保護のあり方自体を見直す必要がある

今日、この瞬間にも、窓口で、生活保護を断られている人がいます。日本は、他国と比較しても、生活保護が受けにくい状態になっています。これ自体が、そもそも大きな問題です。本来であれば、生活保護を受けるべき人が、受けられていないというのが、今の日本の現実だからです。

日本国憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という文言があります。その憲法で約束されていることが、守られていないというのが、日本の現在地なのです。生活保護は、この第25条に従うものであり、それが財源の問題でしぼられつつあるわけです。

本当の目的は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ということです。それに対して、今の生活保護の制度は、うまくいっていないと考えないとならないはずです。ベーシックインカムのような、何か、他の制度を整えないとなりません。

成り行きではより厳しい未来しかない

このまま、今の制度に大きな改革がなければ、現状でさえ厳しい日本の高齢者は、今後、より厳しい状況を強いられるようになります。それはすなわち、私たち現役世代の未来です。この問題は、他人事ではなく、私たち自身の未来に関することだという認識が必要です。

成り行きでは、生活保護の総数は、それを必要とする人は増えて行くはずです。なぜなら、話題になっている通り、年金だけでは足りないという人が増えるだけでなく、8050問題でも明らかになっている通り、無年金という人も増えていくからです。

しかし、生活保護の需給者数は、そうして増えていく必要者数ほどには増えないか、場合によっては、今回の発表のように、減っていく可能性さえあります。今のまま、改革がなければ「これだけ頑張って生きてきて、こんな老後になるのか」という絶望が当たり前の社会になってしまいます。

※参考文献
・下野新聞, 『生活保護、高齢者世帯が最多更新』, 2019年7月3日

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