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人口ボリュームの大きい団塊の世代が高齢化するに従って、介護を必要とする高齢者が急速に増えています。これに対して現役世代の数は頭打ちで、今後、減っていくことが確実視されています。そうなると、高齢者1人あたりに使える社会保障のためのお金も減っていくのが道理でしょう。
この背景を受けて、介護保険の自己負担部分を引き上げようという議論が続いています。それに対して、介護をしている家族などからは、反発も起きてきています。一般には、これまで1割負担だったところが、2割になるという話です。これは、ユーザー目線からすれば2倍になるということです。
例えば、ある介護サービスに対して毎月10万円の支払いをしてきたとしましょう。この時、介護サービス事業者の売上は100万円です。そのうち90万円は、介護保険で支払われています。1割負担が2割負担になれば、介護保険からは80万円の支払いとなり、介護を必要とする人やその家族の支払いは20万円になります。
介護の始まりから終わりまで、介護のためにかかる費用は、平均で787万円という調査があります。1割負担が2割負担になると、単純計算では、倍の1,500万円くらいになるということです。もちろん、実際にはそこまで上がらないはずですが、とはいえ、1,000万円を超えてくるのは間違いないでしょう。
こうして介護にかかるお金が増えると、当然、介護サービスを、これまでのようには利用しなくなる(できなくなる)でしょう。そうなると、介護サービスなしで無理に生活をする結果として、介護が重度化してしまう可能性も高まります。これは、本当に恐ろしいことであり、避けるべきことでしょう。
介護保険の自己負担部分の割合増加は、表面的には、社会保障財源の節約になりそうです。しかし実際には、こうした介護の重度化が起こってしまえば、返って社会保障財源が痛む可能性も十分にあるわけです。
一般には1割負担となっている介護サービスの利用料ですが、富裕層に対しては、すでに、2018年8月1日から3割負担が始まっています。この3割負担の議論があったときには、反対の声が小さかったのです。ということは、現在、すでに3割負担となっている富裕層は、一般が2割負担になるということに反対することはないでしょう。
そして、国政を担う人や、国政に対して影響力のある人々は、こうした富裕層に含まれることが多いわけです。人間の心理として、自分がすでに3割負担しているのだから、他のみんなが2割負担に引き上げられることに反対はしないはずです。
こうして、交渉相手を分断することで、交渉を有利に進めるという手法は、よく知られているものです。すでに日本の国民は、介護保険のあり方について(今のところ)団結に失敗しているため、自己負担の割合については、将来の3割負担までを想定する必要があります。今からこれに反対するなら、富裕層の自己負担割合も3割から2割にするような主張にしないと通らないでしょう。
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