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国の社会保障費は、国民の年金・医療・福祉を支える重要な予算です。この社会保障費は、医療や介護を必要とする高齢者が増えると共に、膨らんでいく性質を持っています。1975年には十数兆円程度であった社会保障費は、2015年には10倍程度の約115兆円と、急激に増えています。
こうした社会保障費が、国民の所得に占める割合のことを特に「国民所得比(国民負担率)」と言います。これは要するに、働いて得られた所得のうち、どれだけの金額が、税金や社会保険料として、社会保障費として徴収されるかを示したものです。
この国民所得比は、1975年には9.49%でした。しかし2015年にはこれが29.57%にもなっているのです。40年間で約20%上昇したということを考えると、このまま増えていけば、2055年には、国民所得の半分が、社会保障費ということになってしまいます。
2055年には、年収600万円の人であれば、300万円が社会保障費として徴収され、残りの300万円からもまた、消費税や住民税といったその他の税金も徴収されるのです。年収に対して、手取りは半分以下になるという未来が、見えてきているのです。
年収の半分近くが税金として徴収されるという意味では、現代の北欧と似ています。しかしそれは、現代の北欧と同水準の高い福祉が得られるということではありません。日本の場合、現状維持のためだけで、年収の半分近くを税金として徴収される未来に向かっているのです。
そして、年金だけではとても足りないので、自助努力で、年金以外にも数千万円規模の貯蓄をするように、というのが今の日本です。年収の半分以上を税金として徴収される時代に、どうやって、それだけの貯蓄をするのでしょう。本当に一部の富裕層以外は、貧しい生活を強いられることになりそうです。
少し前までは、定年というのは、仕事から引退して、のんびりした老後の生活を営むようになるイベントでした。社会保障費も、国民所得比で10%以下という時代であれば、貯蓄もでき、自宅のローンも返却し終わることができました。そうした時代には、引退するという選択肢があり得たのです。
しかしこれからは、引退してしまうと、単に、不十分な所得で貯蓄を切り崩して暮らすことになってしまいます。しかも、そうした所得からは、引退後であっても、様々な税金が徴収されていきます。税率は今後も上がっていきますから、生活は、長生きすればするほど貧しくなっていくのです。
定年というイベントは、恐ろしいものになります。定年ということで、企業からは一度、放り出されます。しかし普通は、定年後も働かないと生きていけない時代になります。そのために再就職すると、かなり年収が減るのが一般的です。定年というのは、単に、生活レベルを下げるイベントということになりそうなのです。
※参考文献
・内閣府, 『平成30年版高齢社会白書(全体版)』, 2019年6月
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