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公的年金だけでは満足な生活水準の維持はできません・・・

公的年金だけでは満足な生活水準の維持はできません・・・

金融庁による公的年金に対する意見の表明

先週、金融庁のワーキンググループが、日本の年金に関する意見を表明し、話題になっています。この意見のポイントは(1)公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性;p24(2)定年後に20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円;p21、という2点になります。

まず(1)については、そもそも公的年金は、誰もが、老後の蓄えとして強制的に支払っているものでした。それでは不足するので、自助努力による蓄えの形成をと言われても、当惑する人が多いのも当然でしょう。念のため注意したいのは、これは公的年金がゼロになるという話ではなく、それだけでは足りないという話です。

また(2)については、その具体的な不足額についての言及です。単純計算で1,300万円~2,000万円というのは、毎月5万円不足するという計算になっています。当然、資料でも強調されていますが、ここは、個人差の大きなところです。ただ、平均的な人でもかなり足りないという事実は揺らぎません。

こうなることはわかっていたのに・・・

少子高齢化は、ずっと以前から問題視されてきました。人口に関する予測というのは、それなりに現実となりやすいとも言われており、今のような状況になることも、十分にわかっていたことです。ですから、今回の金融庁のワーキンググループによる意見の表明については、多くの人が「なんとなく知っていた」と感じたと思います。

問題はここからです。こうした状況になることは予想できたことであり、今、十分な年金をもらっている人々もまた、こうした状況を生み出したことに責任があるでしょう。将来不足することが金融庁によって表明されているわけですから、今の年金もまた、将来に備えて減額すべきという議論になると思います。

それで「この金額では足りない」ということになったとしても、それは、将来の日本人にとっては当たり前の状況ということになります。大変なことではありますが、年金については、その支出をより緊縮させないと、将来足りなくなるという金額が、さらに増えてしまったりもしかねません。

福祉業界で働く人々の年金の優遇政策

介護をはじめとした福祉業界は「待遇が悪くても、誰かが助ける必要のある困っている人がいるから働く」という意識を持っている人々によって成り立っています。社会福祉先進国であるデンマークでは、公務員として認められるような仕事です。

とはいえ、すぐにデンマークのようにはなれないのも現実です。だからといって、福祉業界の人々にだけ、厳しい労働環境を強制させることはできないはずです。特に、年金が足りないというのであれば、自分たちで不足分を貯蓄できる程度には、待遇の改善が必要になるのは当然でしょう。

福祉業界の人々を公務員として認めることができないとしても、せめて、公的年金の支払いについて一部を免除したり、税制や教育費の面での優遇なり、具体的な議論を開始すべきではないでしょうか。給与は急に増やせないにしても、可処分所得を増やして、将来の貯蓄ができるような仕組みは作れるはずなのです。

※参考文献
・金融庁, 『金融審議会市場ワーキング・グループ「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)』, 2019年5月22日

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