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不正受給が過去最多に・・・背景も理解しておきたいが

不正受給が過去最多に・・・背景も理解しておきたいが

介護報酬の不正受給が過去最多に・・・

介護報酬の不正受給が、過去最多になってしまいました。2017年度の実績として、257ヶ所にも及ぶ介護事業者が、処分を受けたのです。この背景には、そもそも介護事業者の数が増えているということもあります。同時に、介護業界を巡る厳しい台所事情も見過ごすことはできません。

介護を必要とする高齢者は、どんどん増えています。それに対して、介護事業者の方はといえば、低すぎる給与が原因で、人材が集まらず、介護職1人あたりの業務負担は増すばかりです。ハコモノとしての介護施設が増えても、介護職が足りないのですから、改善しません。

もちろん、単なる悪徳な事業者や経営者が存在することも事実です。そうした単なる悪徳による不正受給については、きちんと罰則を適用して対応する必要があるでしょう。ただ、どうしても、不正が起こりやすい厳しい環境があるということも理解しておく必要があります。

自治体が運営する事業者でも不正が

こうした不正受給の中には、自治体が運営する事業者による不正も含まれていました。新潟県佐渡市が運営する老人ホームで、なんと、2006年からずっと、不正受給が続いていたというのです(NHK NEWS WEB, 2019年3月20日)。

この佐渡市における不正受給では、内部からの告発があったにも関わらず、不正受給は繰り返されたそうです。内部からの告発を無視した関係者が処罰を受けるべきなのは当然としても、とにかく、悲しいという感情がぬぐえません。

違法行為の告発でさえ無視されてしまうような環境において、介護を必要とする高齢者のQOL向上といった、当たり前の改善提案が通るはずもないからです。そうした環境で厳しい労働を強いられている介護職がいるという事実は、ただでさえ人材不足の介護業界にとって大きすぎる損失です。

同情できる点もあるが経営力の問題が大きいのでは?

金持ちが自分の資産を増やすために意図的に脱税をすることと、飢えに苦しむ人がパンを盗むことは、根本的に意味が異なります。ご存知の通り、介護業界に流れるお金は、あまりにも不足しており、多くの介護事業者が赤字での経営になってしまっています。

不正受給の中には、介護を必要とする高齢者のために、介護事業の継続を目的とした不正受給もあると考えられます。とはいえ、背景に善意があったとしても、不正は不正であることも認めないとなりません。

不正受給によって、不正に得ていたお金は、よく調べてみると、介護職1人分の人件費にも満たない、少額であるケースも散見されます。こんな少額のために、どうして不正を行ってしまったのかと、暗い気分になります。この程度の金額なら、ちょっとした経営改善で生み出せたはずだからです。

介護業界の厳しい状況から、いかに不正だったとしても、同情できる点もあります。しかし厳しい状況でも、不正をすることなく経営できている事業者も存在するのです。そもそも、不正に頼らざるを得なかったような事業者には、経営力の問題もあることは明らかでしょう。

※参考文献
・共同通信, 『17年度介護施設処分257カ所』, 2019年3月19日
・NHK NEWS WEB, 『老人ホームの介護報酬不正請求』, 2019年3月20日

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