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介護業界の賃金問題は、早急に改善されるべき課題です。同時に、介護業界の賃金問題は、日本全体の賃金問題の下位概念でしょう。日本全体の賃金が上昇していれば、介護業界の賃金を改善することも容易になるからです。
この点、とても残念な調査結果が発表されています。日本全体の過去20年を振り返った場合、日本の賃金はマイナスになっているというのです。まずは、以下、日本経済新聞の記事(2019年3月19日)より、一部引用します。
日本の賃金が世界で大きく取り残されている。ここ数年は一律のベースアップが復活しているとはいえ、過去20年間の時給をみると日本は9%減り、主要国で唯一のマイナス。(中略)
国際比較が可能な17年と97年と比べると20年間で日本は9%下落した。主要国で唯一のマイナスだ。英国は87%、米国は76%、フランスは66%、ドイツは55%も増えた。韓国は2.5倍。日本の平均年収は米国を3割も下回っている。
この20年で、日本の平均年齢が上がっていることと、日本にはまだ根強く年功序列が残っていることを合わせて考えると、このマイナスは、かなりの衝撃です。年功序列による賃金の上昇圧力がありながら、実質賃金は下がったのです。
商品が安いということは、消費者の立場からすれば、嬉しいことです。しかし商品を作って売る側からすれば、商品が安くないと売れない状態は、利益が出ないということを意味するでしょう。利益が出なければ、従業員の給与を上げることはできません。
安い商品を求める自分自身が、巡り巡って、自分の給与を押し下げてしまっているわけです。さらに、今後も、給与は上がるどころか下がるという不安は、消費者の財布の紐をきつくさせるでしょう。完全に悪循環になっています。
大企業や経営者が、お金を溜め込んでいるという話もあります。しかし、そうしたところから、より多額のお金(税金など)を徴収しようとすれば、かつての自動車産業や半導体産業のように、経営者のみならず、産業そのものが国外に逃げ出してしまいます。難しいところです。
人口減少と、賃金の低下が起こっている日本では、国内で回るお金の送料が減っているでしょう。そうして、限られたお金を、国内で奪い合っているようでは、この悪循環からは抜け出せません。どうしても、国外からのお金の流れが必要です。
しかし日本の現状はといえば、自動車産業や精密機械産業といった一部の分野を除けば、輸出による外貨の獲得に貢献している産業がほとんどありません。ここ数年で大きく飛躍した観光産業は、そうした中でも、頼りの綱です。
しかし観光産業は、世界経済の景気に作用されやすく、景気が悪くなれば、一気にしぼむ可能性を持っています。観光産業以外にも、安定的な外貨の獲得ができる産業が輸出されなければなりません。その最右翼の1つが、本当は介護産業なのです。
介護産業を、日本の輸出産業に育てるためにも(1)介護業界の賃金を改善して他の業界から優秀な人材を惹きつける(2)介護業界における起業を奨励し投資資金を流す(3)海外展開を視野に入れた外国人労働者の雇用を進める、といった当たり前の戦略が求められます。
※参考文献
・日本経済新聞, 『賃金水準、世界に劣後 脱せるか「貧者のサイクル」 』, 2019年3月19日
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