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社会が高齢化すれば、政府予算の多くが高齢者支援(年金や医療・介護費など)のために使われるのは、仕方のないことです。アメリカでも、10年後には、政府予算の半分が、こうした高齢者支援に使われるようになることが問題視されています(Forbes Japan, 2019年)。
では、高齢者支援の手を緩めればよいのでしょうか。残念ながら、高齢者支援の予算が削られた場合、その穴を埋めるのは、高齢者の親を支援する子供たちということになります。結局のところ、なんらかの支援が必要である状況には変化がないのですから、その負担を政府とするか、子供たちにするかという話です。
資産のない親を持ち、運悪く、その親に重たい医療・介護が必要になった場合、それを子供だけで対応するのは不可能です。ここに大きな政府予算を積む場合は、こうした不運は誰にでも起こるものとしたセーフティーネットを社会に構築するという意味があるわけです。
セーフティーネットというのは、自分にその必要がない人にとっては、なかなか興味関心を向けにくいものです。しかし、現代社会は、ちょっとした病気や事故によって、誰もが簡単に破綻してしまう状態にあります。そもそも政府が存在するのは、こうしたセーフティーネットを充実させるためでもあります。
日本に限らず、先進国の多くは、高齢化に苦しみはじめています。とにかく、政府予算総額の成長よりも、高齢者が増える速度のほうが早いのですから、高齢者1人あたりの政府予算は削られていくことになります。
これは要するに、今後は、先進国における現役世代の負担が、どんどん上がっていくことを示しているでしょう。現役世代は「高齢者支援の予算を減らせ」と言えば、自分たちの首をしめます。逆に「高齢者支援の予算を増やせ」と言えば、増税になるわけで、これもやはり自分たちの首がしまります。
八方塞がりなのですが、今後の「ありそうな流れ」についての予測をすることも可能です。まず、増税は避けられず、消費税はもちろん、給与天引きの保険料などがどんどん上がっていきます。そうなると、親が元気な現役世代の多くが、高齢者支援の予算削減を強く訴えるようになります。
すると、政府としては、高齢者支援の予算を増やしにくくなります。運悪く、医療や介護に大きな出費が必要な人は、その犠牲になり、仕事と介護の両立も苦しくなっていくでしょう。そうして介護離職とそれによる失業が増えると、政府予算は、税収が減るのと同時に生活保護も必要になるため、ますます厳しくなります。
日本は、世界でもっとも高齢化している国です。その中で、こうした悲惨なループが、世界に先駆けて回り始めています。それが逆流するのは、高齢者の数がピークになる2042年以降になるでしょう。ここから20年、地獄のような社会が出現してきます。
ただ、不公平なのですが、そうした地獄を見ることになるのは、日本の全員ではありません。親が健康で、死ぬまで医療も介護も必要としない人の子供であれば、仕事が維持できている限り、贅沢はできなくなりますが、今とそう変わらない生活ができる可能性があります。しかし、親の健康次第では、地獄になるのです。
これは、運による未来の二極化と考えることができます。そうした社会では、運の良し悪しによる格差があまりにも大きくなり、強烈な不公平感が社会をおおうことになるでしょう。それでも、運の悪い人が、社会の過半数を越えない限り、それは運の悪さという言葉で片付けられてしまうかもしれません。
しかしもし、人工知能の台頭による失業などが重なり、運の悪い人が過半数を越えた場合、ベーシックインカム(仕事のあるなし、老若男女に関わらず、等しく月額7万円程度が支給される)が現実的な解決策として選択される可能性が高まります。本当に難しい社会になります。
※参考文献
・Forbes Japan, 『政府予算の「半分が高齢者向け」は善か悪か 議論が無意味な理由』, 2019年2月26日
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