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東京商工リサーチによる発表によれば、介護事業者の倒産件数は、昨年の上半期(1〜6月)時点では、過去最高のペース(前年同期比12.5%増)となっていました。それが、昨年の下半期になって持ち返し、2018年を通した着地(1〜12月)としては、前年を下回る倒産件数となりました。
2018年の倒産件数106件は、前年比として4.5%減ったものの、過去3番目に多い倒産件数になっています。とはいえ、いったんは、過去最高の記録更新を続けてきたものが、ここで減少に転じたことは、喜ばしいニュースです。
介護事業者の収益は、実質的に、国が決めています。介護報酬をめぐる、そうした国の各種采配が、昨年の下半期には効果があったと見るのが妥当でしょう。限られた財源というより、もはや不足が明確になっている財源のやりくりで、こうした効果を生み出した人々の努力は、賞賛に値します。
こうした中、有料老人ホームの倒産件数が、2017年の6件から14件にまで増加している点は気になります。中小企業が多い介護業界において、老人ホームは、その設備に大きな資金が必要になることから、なかなか参入できない業態です。
そんな老人ホームの倒産が増えていることは、業界にとって大きなインパクトがあります。介護職の雇用が減るということもありますが、それ以上に、そうした老人ホームに入居している高齢者の生活がどうなるのか、とても心配です。
老人ホームの入居には、入居時に数百〜数千万円の費用がかかることが普通です。倒産した老人ホームは、そうした入居費を、高齢者に返却することができるのでしょうか。まず、無理でしょう。そうなると、倒産した老人ホームから出なければならなくなった高齢者の資産は、大きく目減りしている可能性が高いのです。
これから、日本のさらなる高齢化に向けて、介護業界には多くの新規参入があります。そうして介護事業者の数が増えていけば、倒産もまた増えるのは、経済の競争原理からしても、仕方がないことです。問題は、そうした倒産によって、大きく資産を減らしてしまう高齢者が生まれてしまうことでしょう。
特に、老人ホームの一時入居金のような、預かり資産としての意味合いが強いものは、倒産時にはまず返却されない性格のものです。こうした倒産は、確率で発生してしまうのは避けられないのですから、国が、そうした損失を補填するような仕組みが必要になるはずです。
こうした仕組みを維持するために、さらに税金を投入するのも難しいかもしれません。そうであれば、保険として、老人ホームに入居する高齢者からは、一定額の保険料を徴収し、それで、倒産の影響を受けてしまう高齢者の保護を行っていくことも検討すべきでしょう。
※参考文献
・東京商工リサーチ, 『2018年「老人福祉・介護事業」倒産状況、倒産件数が106件、7年ぶりに前年を下回るも高止まり』, 2019年1月11日
・東京商工リサーチ, 『2018年上半期「老人福祉・介護事業」の倒産状況』, 2018年7月9日
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