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高齢者割引を目にしない日はないほど、高齢者割引というのは、日本では一般化しています。経営学的には価格差別(price discrimination)と呼ばれるものの1つで、同じ商品であっても、買い手ごとに異なる価格を提示するというマーケティング戦略です。
当然ですが、本来は、それによって、企業側の収益に良い影響があるからこその価格差別です。たとえば、タクシーの深夜料金や季節外れのリゾート地の割引料金はもちろん、ハッピーアワーやランチタイムだけの特別セットなども、ある種の価格差別と言えるものです。
こうした価格差別の1つとして、高齢者割引もまた、広く日本中で見られるものになりました。美術館や博物館はもちろん、様々な施設の入場料が割引になるだけでなく、公共交通なども、割安になることは普通のことのように考えられています。場合によっては、高齢者は無料というケースも見られるでしょう。
高齢者割引が、高齢者の外出理由となるのであれば、国として意味があります。よく外出をして、社会との接点をしっかりと持っている高齢者は、健康を維持しやすく、介護が必要になる可能性を減らせるからです。
ただ、高齢者は無料という表示を見たりすると、さすがにこれは、高齢者割引の域を超えていると感じます。その分だけ、現役世代の負担になるわけですが、いまの現役世代は、自分たちの生活を切り盛りするだけでも大変ですし、それこそ介護にもお金がかかります。
自分で収入を得ることがない子供の料金は、親が負担することになりますから、割引があって当然でしょう。子供は将来の納税者であり、社会的な投資としても、子供の割引は必要です。では、高齢者の割引には、先にあげた外出理由を増やす以外に、なにがあるのでしょう。
一律の高齢者割引、もっともはっきりとしているのは、敬老パス(高齢者が公共交通を安価に使える)のように、自治体レベルで年間100億円もかかる事業は、見直すべきだということです。高齢者の中には、お金持ちも多数います。そうした人まで、割引をする社会的な必要性はないからです。
逆に、生活保護を受けていたり、日本の貧困の大きな部分をしめている母子家庭などには、もっとこうした支援が必要でしょう。プライバシーに配慮することはとても重要ですが、そうしたところでこそテクノロジーは威力を発揮してほしいところです。
ただ、年齢が65歳以上だからということで、割引をするのは、これだけ社会福祉のための財源が枯渇している日本では、おかしなことではないでしょうか。民間企業であれば、独自の判断もあるでしょう。しかし特にそれが、国立や自治体の施設だったり、助成金が入っているような施設であれば、話が変わってきます。
現在の日本では、現在の65歳以上という高齢者の定義を見直し、高齢者を75歳からとする議論が開始されています。そこには、論点としてはほとんど無視されているものの、高齢者割引による経済損失を減らすという視点もあるのでしょう。
ただ、そうして高齢者の定義を75歳以上にする形での高齢者割引の後ろ倒しは、現役世代の利権を減らし、高齢者の利権を維持するという方向に働きます。いまの現役世代が高齢者になるころには、ちょうど、高齢者割引もないということになります。
そうした未来が見えているのであれば、いっそ、高齢者割引という年齢差別は、完全に撤廃してしまうことも考えるべきではないでしょうか。そして、そこで浮いた財源を、なんとか、介護業界の待遇改善に回すということはできないものでしょうか。
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