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介護職員の負担軽減に向けて、あらたな補助金が登場する

介護職員の負担軽減に向けて、あらたな補助金が登場する

介護業界の人材不足は限界に近づいている

介護業界の人材不足は限界に近づいています。厚生労働省の試算でも、2025年には38万人が不足すると考えられています。外国人を労働力として活用する流れも生まれつつありますが、2020年までに1万人程度と、介護業界の人材不足にとっては「焼け石に水」という状態です。

こうした状況にも関わらず、介護現場の仕事の中には、書類仕事に代表される雑務が多量に存在しています。介護には公費(国の税金など)が使われるため、仕方のないことではあります。しかし介護の専門性をもった人材が、人材不足にも関わらず、そうした雑務までこなしているのは、実に非効率なことです。

こうした状況に鑑み、厚生労働省が、あらたな補助金を準備しています。介護の専門性をもった人材には、介護に集中してもらおうという意図をもった補助金です。以下、日本経済新聞の記事(2018年8月26日)より、一部引用します。

厚生労働省は人手不足に悩む介護事業所で、資格をもつ専門職員を有効活用する取り組みを促す補助金制度をつくる。介護職員が事務や清掃まで担うケースがあり、こうした業務を担う人員を補充したりする経費を補助金で賄えるようにする。事業者間での人員融通なども対象になる見通し。(中略)

介護業界の人手不足は深刻で、有効求人倍率は近年ほぼ一貫して3倍を上回る。少人数で施設を運営するには複数の業務をこなし、職員1人あたりの負荷が大きくなりがち。ケアなど本来業務に十分時間をかけられなくなるケースもある。(後略)

とにかく待遇の改善を急いでもらいたい・・・

こうした補助金は、大歓迎です。実際の介護現場における雑務の量には驚かされているからです。こうした雑務の簡略化とともに、雑務を、できるだけ専門性をもった人材にさせないようにすることは重要なことだからです。

同時に、こうした介護業界の人手不足の根本原因である待遇の悪さについても、なんとしても改善してもらいたいです。そもそも待遇がよければ、もっと介護業界に人材を集められるからです。そのための財源は、なんとしても確保しなければなりません。

財源としては、不祥事の続く地方議員の給与の見直し高齢者の交通を優遇する敬老パスの見直し、そして介護職員の公務員(準公務員)化など、実際にそれを行うかどうかはともかく、可能性のあるところは全て議題とすべきでしょう。

近未来には、失業の受け皿にもなっていく介護業界

三菱総合研究所の試算によれば、2030年までのあと10数年の期間で、人工知能(AI)による失業が740万人も生まれるそうです。こうした失業の受け皿となりえるのが、人工知能では代替しにくい対人援助職が求められる介護業界なのです。

介護業界の職場環境を含めた待遇問題は、多くの日本人にとって、将来の自分が働くことになるかもしれない世界の話なのです。また、仮に自分がそこで働かないとしても、自分の親に介護が必要になったり、自分自身に介護が必要になったとき、そこに介護人材がいなければどうなるでしょう。

いまという時間をどのように過ごすかは、私たちの未来の原因です。高齢化社会において、高齢者として生きることは、私たちすべてに共通する未来です。その未来は、いまの私たち自身が作り出すものであり、私たちの責任であるという認識が求められています。

※参考文献
・日本経済新聞, 『介護職員の負担軽減へ補助金 厚労省、本来業務に専念』, 2018年8月26日

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