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子供にちょっとした習い事を含めた十分な教育を与え、年に一度は家族旅行をしたりすることは贅沢でしょうか。結婚をしていなくても、将来につながる自己投資をしたり、趣味の習い事をしつつ、年に一度は友達と旅行に行くようなことは贅沢でしょうか。
贅沢とは言えなくても、この程度であれば、誰もが実現したい日常だと思います。こうした日常が、お金を理由として得られない場合、幸福度が下がることは当然でしょう。統計的には、年収800万円までは、年収と幸福度は相関することが指摘されています。以下、DIAMONDの記事(2017年9月6日)より、一部引用します。
アメリカでは年収7万5000ドル、日本では年収800万円を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなることがわかっています。興味深いことに、アメリカと日本で幸福度が一定になる金額はほとんど変わりません。
誤解のないようにいっておくと、これは「幸福になるのにお金は関係ない」ということではありません。逆に、「お金は幸福になるもっとも確実な方法だ」ということを示しています。800万円というのは1人あたりの年収ですから、家族の場合は世帯(専業主婦家庭なら夫)の年収が1500万円を超えるとお金の限界効用はゼロに近づきます。(中略)
「老後破産」が流行語になったように、少子高齢化が進む日本では多くのひとが定年後の生活に大きな不安を抱いています。これは日本人の幸福度を引き下げる要因になっているのですが、この不安は一定以上の資産を保有することで解消されます。
日本では、底辺と言えるような環境から努力によって成功した事例のようなものが好まれます。しかし、それは例外だから美談になるのであって、そうしてピックアップされない人々の多くは、底辺を抜け出すことができないままでいます。日本という国について考えるなら、こうした例外ではなく、大多数がどうなるかを認識すべきでしょう。
人手不足に悩む介護業界では、仕事のやりがいを強調しながら、年収にして400万円を切るような待遇の改善はしないままに、人材の募集が続けられています。これは、先の年収と幸福度の相関性の話からすれば、不幸な人を増やす活動になってしまっているのです。
もちろん、介護は奥深く、獲得された専門性は長期間に渡って有効である可能性も高いものです。しかし、人間として生きていくためには、長期的には年収800万円に到達するかもしれないという希望のある待遇の体系が必要です。それをしないままに、例外的な事例を宣伝に使うのは、あまりにも不誠実ではないでしょうか。
これから、極端な高齢化によって、日本では介護への需要が極限に向けて高まって行きます。同時に、人工知能の発達によって、一般的な仕事においては、2030年までに730万人もの雇用が失われるという試算があります。そうして失われた雇用は、介護業界が吸収することになるのです。
今後、介護業界で働く人は増えていきます。そうして日本の大事な労働力となる人々の待遇が、いまのままでは、日本は二極化というレベルを超えて、社会階層の分断に到達してしまいます。そして、このとき大多数となるのは、底辺となる階層のほうです。
歴史的には、二極化によって大多数の底辺が生まれたとき、戦争になることが示されてきました。特に多数決を前提とした民主主義において、多数派が底辺になると、極右的な政権が登場することになっています。これから介護業界で働く人が増えるからこそ、介護業界の待遇の改善は急がれなくてはならないのです。
※参考文献
・DIAMOND, 『年収800万円を超えると幸福度は上昇しなくなる』, 2017年9月6日
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