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介護保険サービスの利用には自己負担が必要です。通常は、自己負担は1割で、残りの9割を介護保険がまかなってくれます。しかし高齢者で現役を引退していても、それなりに所得が多いと、この自己負担の割合が2割と、2倍になっていました。それが今日から3割と、3倍の負担となります。
所得が多い人だけの話だと考えていたら、将来、恐ろしいことになります。こうした自己負担の増加は、消費税と同じで、後々、みんなのところにやってくることになるでしょう。以下、毎日新聞の記事(2018年7月29日)より、一部引用します。
8月1日から介護保険サービス利用の自己負担が、所得の高い高齢者を対象に2割から3割に引き上げられる。厚生労働省の推計では、負担増となるのは利用者全体の3%弱の約12万人。「なぜ自分が3割なのか」との問い合わせも自治体にあり、必要なサービスの利用をやめる人が出る恐れも指摘されている。(後略)
多くの人は、今回、こうして3割負担になることに対して「自分には関係のないこと」として、反対しないでしょう。その場合、次に、所得の多くない人の自己負担が増えるときに、すでに3割負担になっている人は「自分には関係ないこと」として、反対しません。
むしろ、すでに自分たちは3割も負担してきたのですから、他の人の負担が上がることに対しては賛成すると思います。こうして、日本人は、所得の範囲によって分断され、それぞれが個別に負担増とされることによって、現実には、所得に関係なく、高い社会保険を負担していくという方向に向かいます。
交渉術の基本は、このように、交渉相手を分断することです。特に、今回のように少数派を狙い撃ちにすれば、大多数は気にもしません。結果として、今後も、少数に分断しながら、個別に負担をあげていくことが簡単になるのです。
将来は、収入の多い人は、3割を超えての自己負担が求められたり、他の部分で不利益を被るようになるでしょう。収入が少ない人も、収入が多い人の後を追うようにして、負担が上がっていくことは避けられません。それだけ、日本の社会福祉財源は、大変な状況になっているのです。
本当は、年齢によらず、収入ではなくて、財産も含めてお金のある人からは多くのお金を徴収することが必要なのです。そうして集めたお金は、本当にお金に困っている人のところに流れていかないとなりません。しかし、そうした「当たり前に思えること」を実行するのは、実はとても難しいことだったりもします。
日本は、このように、富の再分配がうまくいっていません。結果として、低所得者が、社会福祉の充実を望んていないというおかしな状況になっています。日本が社会福祉の充実をすると、本来は支援される側であるはずの低所得者が救われないと考えられているからです。
※参考文献
・毎日新聞, 『8月から介護に3割負担 高所得者対象』, 2018年7月29日
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