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いよいよ混合介護が本格的に稼働しはじめる(貧富の格差)

いよいよ混合介護が本格的に稼働しはじめる(貧富の格差)

混合介護がはじまった

混合介護とは、介護保険でカバーされる介護サービス(利用者が1〜2割を負担)と、カバーされない介護サービス(利用者が全額負担)を合わせて提供するというものです。介護保険でカバーされない介護サービスも含まれますから、通常は、利用者が介護サービスに支払うことになるお金は高くなります。

こうした混合介護は、これまでも、禁止されてはいませんでした。しかし、どこまでが介護保険でカバーされ、どこからが介護保険でカバーされないのかという境界線が曖昧なこともあって、混合介護を認めない自治体があったり、介護事業者もリスクを犯してまで混合介護に参入することに躊躇してきました。

こうした中、国家戦略特区におけるモデル事業として、混合介護のあり方を示す事業が開始されました。これにより、今後は、日本全国で混合介護が実質的に解禁されていくと考えられます。以下、日本経済新聞の記事(2018年6月28日)より、一部引用します。

東京都豊島区は28日、介護保険と保険外サービスを組み合わせる混合介護のモデル事業の参加業者を発表した。訪問介護を手がける東京電力の子会社など9団体が8月から介護保険のサービスに加え、家事や買い物の代行など多様なサービスを用意する。(中略)

計画では要介護者の食事などの世話をする訪問介護に加え、居宅内外の日常生活支援や安否確認に関連した保険外サービスを受け付ける。電球の交換や趣味への同行のほか、ウェブカメラを使った見守りなど37種類のサービスを用意する。(後略)

混合介護が必要になる背景

混合介護が必要になる背景としては、介護業界の人手不足が最大の要因になっています。2025年には38万人も足りなくなるという介護業界の人手不足は、これからどんどん深刻度を増してきています。介護保険を支払ってきたのに、介護サービスを提供してくれる介護事業者がいないというケースも増えるでしょう。

特に都市部では、介護人材の有効求人倍率が5倍を超えるところが出てきました。これだけの人手不足になってしまっているのは、介護業界の待遇が悪い(全産業比較でも最悪というデータもある)からです。しかし、介護業界の待遇を改善するのは容易なことではありません。

介護業界の売上に相当するのは、介護保険の財源であり、それには天井があります。介護保険のための財源の枠内で経営をすることが求められており、この財源が急に増えない限り、介護業界の人件費(待遇)は改善できないのです。このため、介護業界の待遇改善には、介護保険以外の財源が必要ということになります。

それが、混合介護というわけです。介護保険ではカバーされない介護サービスを提供し、そこからの収入を財源として、介護業界全体を立て直すという戦略なのです。ここで最大の問題となるのは、介護にも貧富の格差が生まれてしまうことでしょう。

この流れは止められない

介護サービスが必要になったとき、要介護者(利用者)は、その経済力も含めてアセスメントされるようになります。ここで、要介護者にそれなりのお金がある場合、多くの介護事業者が寄ってくることになります。しかしお金がなければ、要介護者のほうからお願いをして、介護サービスを提供しなければならなくもなります。

こうした貧富の格差はいけない、というのはその通りです。ですが現状では、業界レベルで貧富の格差が生まれてしまっており、介護業界は、その最下層にあるという状態なのです。要介護者の貧富の格差をなくそうとすれば、介護業界で働く人々は貧困層になってしまいます。

そもそも、高齢者だけが、貧富の格差のない世界に生きているのもおかしな話です。日本における子供の貧困は、先進国では最悪というレベルになっています。当然、子供の貧困は、親の貧困を意味しています。そうした親は、待遇の悪い業界で働いていることがほとんどでしょう。

要介護者に貧富の格差ができてしまうことは、悪いことです。同時に、もはや日本という国は、貧富の格差を無くせるような余裕のある状態ではないという認識も求められます。今後はさらに、こうした状況が改善する可能性は低く、貧富の格差はより深刻なものになっていくでしょう。

※参考文献
・日本経済新聞, 『豊島区の混合介護事業、東電系など9団体参加』, 2018年6月28日

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