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現在の高齢者は、日本の高度成長期を支えてきた存在です。それにもかかわらず、老後の資金が足りず、生活保護になってしまう高齢者は少なくありません。少なくないというよりも、現在、生活保護を受けている世帯のうちの過半数が高齢者世帯というのが実態です。
そもそも、日本の社会福祉は、そのための財源が枯渇してきています。生活保護が必要な高齢者世帯がどんどん増加しているいま、日本の社会福祉もまた危機に瀕しています。以下、毎日新聞の記事(2018年6月6日)より、一部引用します。
厚生労働省は6日、3月の生活保護に関する調査結果を公表した。これを受け、毎日新聞が2017年度分を集計したところ、受給世帯(月平均)は過去最多の164万811世帯に上った。過半数を占める「高齢者世帯」(同)も86万4709世帯と過去最多を更新。高齢化を背景に生活保護を頼りに暮らす困窮高齢者が増え続けている。(中略)
医療や介護を必要とする高齢者の貧困が拡大するに連れて生活保護費は増大し、国と地方の負担額は約3兆8400億円(17年度)に上る。厚労省は18年10月から3年かけて生活費相当分を段階的に削減し、国費で年160億円分(約1.8%)を減らす予定。
いまの高齢者は、貯蓄のしやすい高度成長期を生きた人々です。しかし、これから高齢者になるいまの現役世代は、あがらない賃金と、あがりつづける税金や社会保障費にはさまれて、貯蓄のしにくい状況にあります。そんな現役世代が高齢者になれば、生活保護が必要な人の割合も激増しているはずです。
今後も増えていく生活保護世帯を支援するためには、さらに税金や社会保障費を増やしていくしかありません。そしてそれは、いまの現役世代の犠牲の上にしか成立しないのです。この背景には「誰が犠牲になるべきか」という議論が存在しています。
トリアージという言葉があります。災害などがあって、多数のけが人が出た場合、どういう順番で手当を行うのかを決めることをさした言葉です。現在の生活保護のための公費を削るということは、実質的に、公費は、高齢者を救わないということです。公費の使い道の選択という形で、このトリアージはすでにはじまっています。
いまからどんなに叫んでも、高齢者(いまの高齢者だけでなく将来の高齢者も含む)に犠牲になってもらうというトリアージの方向性は修正できないでしょう。貧困の高齢者は増えるばかりなのに対して、公費の財源となる税金や社会保障費は、際限なく増やせないからです。
日本の近代史を振り返ってみれば、運命の分かれ道だったのは、就職氷河期から、不安定な環境に置かれ続けてきた団塊ジュニアを救わなかったことです。これにより、団塊ジュニアは、子供を産まないまま、生物学的に出産可能な年齢を超えてしまいました。
振り返ってみてもどうにもなりませんが、究極的には、強すぎる日本の解雇規制が、この根本原因でしょう。解雇規制で正社員を守るということは、筋の悪いトリアージだったのです。それによって団塊ジュニアの多くは、非正規労働という不安定な環境に置かれたわけですから。なんとも、残念です。
※参考文献
・毎日新聞, 『生活保護 最多164万世帯 17年度、困窮高齢者増え』, 2018年6月6日
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