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高齢化にともない、日本の社会保障費は増加していきます。政府が2040年の推計値を出しましたが、それはなんと190兆円です。そもそも日本(国・地方自治体・社会保障基金)の歳入は約180兆円という規模です。経済がかなり成長するというシナリオが実現しないと、日本の社会保障は完全に破綻します。
とにかく、税収を増やさないとなりません。しかしこれから、2040年にかけては、現役世代が極端に少なくなっていきます。稼ぐ世代が少なくなるのに、税収を高めるためには、現役世代一人当たりの税収を増やさないと不可能です。当然、増税ということになるでしょう。
問題は、税収のほとんどが社会保障費になってしまう未来に、公務員の給与や、その他の国の運営費が出せるのかという部分です。以下、日本経済新聞の記事(2018年5月21日)より、一部引用します。
政府は21日、税や保険料で賄う医療、介護など社会保障給付費が経済成長率を年2%前後とする基本ケースで2040年度に190兆円になるとの推計を公表した。18年度から6割増え、特に介護は高齢者数の増加で2.4倍の約26兆円に膨らむ。(中略)
制度の支え手の負担は増す。推計では例えば、主に大企業の会社員が負担する医療・介護の保険料率は合計で年収の13.9%(労使折半)と、現状より3.2ポイント上昇するとした。40年度の保険料全体は現在の約1.5倍の107兆円が必要だという。
給付の膨張に歯止めをかけなければ、制度を支えきれなくなる恐れがある。推計は一定の経済成長や賃金増を前提とし、基本ケースで40年度のGDPは790兆円と18年度より4割増えるとした。だが過去の実績をみると、00年度から15年度までにGDPは0.7%増だった半面、GDPに対する社会保障給付の比率は6.8ポイントも上昇した。(後略)
2040年までの23年間で4割成長しているためには、毎年、1.5%の経済成長が必要という計算です。しかし、2000〜2015年までの平均の成長率は0.7%にすぎなかったのです。本当に、それだけの成長が、今後、実現可能なのでしょうか。大いに疑問です。
これから労働者がいなくなっていく日本において、過去の年間平均で0.7%の成長を維持するだけでも大変です。仮に、0.7%が維持できた場合でも、2040年には約2割の成長(正確には17.4%)にとどまります。その場合、労働者数と税率が変化しなければ、日本の歳入は211兆円となります。
211兆円のお財布から、190兆円が社会保障費で消えてしまえば、日本の国家運営ができなくなるでしょう。しかも、この間に、労働者数は12%程度は減少するのです。この減少が、労働効率の向上によって穴埋めできたとしてもなお、足りないのです。
そろそろ、私たち日本人は、国の経営を間違ったことを認める必要があるのではないでしょうか。無理なシナリオを描かないと、今と同じだけの社会保障が維持できないのですから。そもそも、今の社会保障でさえ問題が山積みなのです。しかし、今のままでは、その維持さえできそうもないのです。
この課題を別の角度から考えてみると、日本においては、社会保障領域、特にヘルスケア領域が成長していくということでもあります。国内ビジネスとしては、この領域に投資をして、成長を実現していくことが重要ということになります。
この領域の成長を取り込めば、そこからの税収もあります。しかし、この領域で活躍するのが外資系企業ということになってしまうと、成長するヘルスケア領域から得られる税収が減ってしまいます。ただでさえ足りない税収が、そうして国外に流出してしまうことは避けなければなりません。
この視点からすれば、ヘルスケア領域における国内産業の振興は、国難に当たる上での大前提でしょう。より多くの国内企業がここに投資をして、世界に羽ばたくプレーヤーが増えていくことに失敗すれば、本当に日本が滅んでしまうのです。
※参考文献
・日本経済新聞, 『社会保障費、2040年度に190兆円 介護の負担重く』, 2018年5月21日
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