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介護職の給与は、厚労省による試算でも、全産業平均よりも月額10万円以上安い

介護職の給与は、厚労省による試算でも、全産業平均よりも月額10万円以上安い

介護職の待遇問題について

介護職の待遇が問題であることは、これまで何度もKAIGO LABでも指摘してきました。本当に急がないと、日本の介護には悲惨な未来しかありません。待遇が悪すぎて、介護のための人材確保が、数十万人規模で完全に間に合っていないのです。

そもそも介護は、誰にでもできる仕事ではありません。高い専門性が求められるのはもちろん、適性(向き不向き)が大きい仕事でもあります。介護職が不足したからといって、すぐに補充できるようなものではないのです。介護職の教育訓練には、相当な時間も必要なのです。

いざ自分や自分の親に介護が必要になったとき、そこに介護職がいてくれなければ、介護のために仕事を辞めなければならなくなるでしょう。そうなってから「どうなっているんだ!」と嘆いても、本当に手遅れです。介護保険は、保険ですから、必要になれば使えるはずです。しかし使うためには、介護職がどうしても必要なのです。

介護職の待遇には様々な調査がある

介護職の待遇に関しては、様々な調査があります。もっとも厳しい数字としては、全63業界中でダントツの最下位というもの(東洋経済, 『格差歴然!40歳平均年収「63業界」ランキング』, 2017年9月8日)があります。ただこれは民間の調査であって、公式なものではありません。

そんな中、厚生労働省による公式な調査結果が発表されています(2018年4月4日)。この数字は、国としてそう把握しているという証拠であり、重要なものです。以下、朝日新聞の記事(2018年4月4日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

厚生労働省は4日、2017年4月の臨時の介護報酬改定で拡充した「処遇改善加算」を取った事業所で働く常勤の介護職員の平均給与月額が、同年9月時点で前年比1万3660円増の29万7450円だったと発表した。報酬改定の効果が一定程度表れた形だが、それでも全産業平均の40万8千円(16年)と比べると約10万円低い。(中略)

臨時報酬改定は介護福祉士の資格を持つ人などの賃金を平均月1万円ほど引き上げることを狙い、約600億円の財源をあてた。ただ、全産業平均との賃金差は埋まらず、人材不足も解消されていない。介護職員の有効求人倍率は全国平均で4・02倍(18年2月)と高止まりしている。(後略)

現場感としての介護職の待遇

現場感としては、介護職の待遇は、夜勤もあるフルタイムでも、手取りで月額20万円にも満たないものです。これをもって、介護事業者が悪徳であるというのは間違っています。介護事業者も、毎年、過去最高の倒産件数を記録するほどに、儲かっていないからです。

大手の介護事業者でも、採算の合わない地域からの撤退をはじめています。今後、介護を必要とする高齢者が激増するにも関わらず、です。この背景には「どうなっても、知らないぞ・・・」という介護事業者の怒りにも似た迷いが感じられます。

いまの待遇では人が集まらないので、外国人を使おうとする動きもあります。建前上は、外国人に介護の技術を伝える実習ということになっていますが、実際は、そうではありません。世界からは、日本における外国人の奴隷労働として、是正勧告が出されているほどです。

本当に、限界が近づいています。というよりも、ニュースにならないだけで、すでに限界を超えていると考えたほうがよさそうです。このまま、介護事業者の撤退や倒産が続き、不当に外国人労働者をつかうばかりの業界になっていけば、私たち一人一人が破綻してしまうのです。

※参考文献
・朝日新聞, 『介護職月給1万3千円増も、全産業平均を10万円下回』, 2018年4月4日

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