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介護領域の起業支援が広がりつつある(長野県飯田市)

介護領域の起業支援が広がりつつある(長野県飯田市)

介護は成長産業である

介護業界には、待遇面の問題があって、人手不足が続いています。しかし、介護労働者の総数は、2000年の介護保険制度の開始時には約54.9万人だったのが、2015年には約183.1万人にまで、およそ3倍増加しているのです。

同時に、毎年のように過去最多の倒産件数を記録するのも、介護業界の事実の一面です。とにかく問題は多いものの、介護業界が成長産業であることは間違いありません。そうした中、介護で起業する人を支援するという制度が長野県飯田市ではじまりました。以下、日経新聞の記事(2018年2月27日)より、一部引用します。

飯田市は金融機関や経済団体と組み、インバウンド(訪日外国人)関連や介護といった成長市場での起業を支援する。第1弾として伝統工芸の技術を生かして外国人向けのスキー板を作る企業など3社を対象にすることを決めた。成長分野で起業や新事業の立ち上げを目指す人材を呼び込み、地域経済の活性化につなげる狙いがある。

飯田市のほか八十二銀行や長野銀行、中部経済連合会、日本貿易振興機構(JETRO)など15団体で作る新事業創出支援協議会「I―Port」が主体となる。17年8月に発足して以来、支援先を決めるのは初めて。今後、I―Portの活動が本格的に動き出す。(中略)

介護予防事業企画のネクサスラボ(同)はビッグデータを駆使して地域特有の高齢者の事情を把握し、健康な体づくりを企画・立案する。「坂道が多い」といった土地の特性や食べ物の好みなどを分析した上で、自治体にプログラムを提案。実際のサービス提供は民間などの事業者が受け持つ。(後略)

敬老パスの予算は(一部)投資にまわすべきではないか

自治体の中には、100億円を超える規模で、敬老パス(高齢者のための公共交通の定額乗り放題施策)に助成金を出しているところがあります。こうした敬老パスによって、公共交通の経営を安定化させたり、高齢者の外出を促進することで健康維持につながっているというのも事実でしょう。

ただ、その全てとは言わまいまでも、ほんの一部でも、地元で起業する人々への投資に回せないものでしょうか。また、倒産が続く介護事業者を助けるために使えないものでしょうか。そうしないと、たとえ敬老パスが残っても、介護事業者がいない地域が増えていってしまいます。

その意味で、長野県飯田市の取り組みは注目に値します。特に、市町村レベルの自治体が、広い範囲で民間とも手を組んで投資に乗り出すという形は、とても新しい形だと思います。失敗もあるでしょうが、そこで起こった失敗もまた後の財産になります。

自治体として注意したいこと

こうした活動は、今後、どこの自治体でも打ち出していかないとならないものになります。ただそのとき、注意したいことがあります。それは、昨今なにかと悪評の高いコンサルタントの使い方です。とはいえ、言うまでもないことですが、コンサルタントの中には、本当に優れた成果を出せる人も多数います。

ただ、仕事の保守本流は、自分たちで考えて、自分たちで起業の支援をしていくことです。しかし、はじめは右も左もわからないはずで、コンサルタントの世話になる必要もあるでしょう。しかし、コンサルタントの料金は高いですし、コンサルタント選びには特に注意しないとなりません。

結論から先に言えば、仕事の進め方を教えてくれる教師的なコンサルタントを見つけるべきでしょう。そうでないと、毎年、同じ仕事をコンサルタントに発注しなければならなくなるからです。いくら能力が高くても、仕事を丸投げする先としてのコンサルタントでは、経験や知識が自治体の側に蓄積されません。

なんとか優れた教師的なコンサルタントを探し出してもらいたいものです。そして、そこからノウハウを吸収して、本当に力のある自治体になれたら、地域の発展に大きく貢献できる自治体になるはずです。

※参考文献
・日本経済新聞, 『長野・飯田市の起業支援 訪日客関連や介護に照準』, 2018年2月27日

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