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給与総額(基本給のみならず、残業代やボーナスなどを合計した総額)は、上がっているようです。これはこれで嬉しい話のようですが、ここには、給与総額の上昇よりも、物価の上昇のほうが速度が早いという問題があります。以下、NHK NEWS WEBの記事(2018年2月7日)より、一部引用します。
厚生労働省が、全国のおよそ3万3000の事業所を対象にした調査の速報値によりますと、基本給や残業代、ボーナスなどを合わせた去年の給与総額は、働く人1人当たりの月の平均で31万6907円で、前の年を0.4%上回り4年連続で増加しました。(中略)
一方、物価の変動分を反映した実質賃金は前の年を0.2%下回りました。また、冬のボーナスなどを含めた去年12月の給与総額は、55万1222円と、5か月連続で前の年の同じ月を上回りましたが、実質賃金は0.5%下回りました。(後略)
物価が上がっていることで、実質賃金が下がっているということが、先のニュースの根幹です。しかし本来は、実質賃金だけでなく、そうした実質賃金から税金や社会保険料を引いた可処分所得についても見なければならないでしょう。
そして、KAIGO LAB でも過去になんども言及してきたとおり、医療や介護のための社会保険料は、どんどん上がっています。しっかりと給与明細を確認してもらえばわかりますが、意外と多くの人が、この認識がなかったりします。
そんな可処分所得のうち、貯蓄にまわされる割合のことを家計貯蓄率と言います。この家計貯蓄率は、2013年からマイナスになっているのです。これはすなわち、多くの人が、実質賃金だけでは生活することができず、貯金を切り崩していることを示しています。
働き方改革は、結果として、残業が減ることで、実質賃金の上昇抑制になってしまう危険があります。残業を減らした分だけ、基本給が上がったりすればよいのですが、そうした人事制度を運用している企業は、まだ少数でしょう。
残業が減り、より人間らしい豊かな生活ができるのであれば、それは素晴らしいことです。しかし、こうして実質賃金が減り、社会保険料が上がるという構造が、果たしていつまで維持できるのでしょうか。切り崩す貯蓄にも、限界があるはずです。
この状況にあっては、社会的弱者ほど、社会保証の充実を拒むという逆説的な状況も改善されないでしょう。一律に高齢者を優遇する政策を終わらせ、本当に必要な人のところに社会福祉が届くような環境の構築を急がないとなりません。
※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『去年の給与総額 4年連続で増加も実質賃金は減少』, 2018年2月7日
・東洋経済Online, 『家計貯蓄率がマイナス、日本経済の影響は?』, 2015年1月18日
・三井住友信託銀行, 『家計貯蓄率マイナスをどう考えるか』, 調査月報2015年2月号
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