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この4月から、紹介状なしの受診に5千円以上のお金がかかる病院が増えます。

この4月から、紹介状なしの受診に5千円以上のお金がかかる病院が増えます。

大きな病院の問題

大きな病院には、患者が集まりすぎるという問題がありました。患者の気持ちになれば、街の小さなクリニックではなくて、大きな病院のほうが安心という気持ちもあるのかもしれません。しかし実際には、病院の良し悪しは、その大きさとは関係のないものです。

そこで、患者の待ち時間解消のためにも、大きな病院から、街の小さなクリニックへの患者の流れを生み出す必要があります。これを目的として、大きな病院を紹介状なしに受診する場合には、通常の医療費とは別に、5千円以上の初診料を徴収することになっています。

この4月からは、こうした初診料を課すことになる大きな病院の定義が、これまでのベット数500床以上から400床以上に変更されます。これによって、対象となる病院の数が増えることになるため、注意が必要です。以下、朝日新聞の記事(2018年1月25日)より、一部引用します。

紹介状なしで受診した場合、初診時に5千円以上、再診時に2500円以上の定額負担を求められる病院が4月から増えることになった。厚生労働省が定額負担を義務づける病院を今の500床以上から400床以上に拡大する方針を決めたためで、対象は約260カ所から約410カ所へと1・6倍ほどになる。(中略)

今の対象は、高度な医療を提供する大学病院などの「特定機能病院」と、地域医療の拠点となる「地域医療支援病院」のうち500床以上の病院。厚労省によると、制度導入後に紹介状なしの初診患者が3%ほど減ったという。

厚労省は一定の効果があると判断し、対象を400床以上500床未満の地域医療支援病院約150カ所にも広げる。今も200床以上の病院は紹介状がない患者から特別料金を取ることができる。初診時には多くが2千~3千円を徴収していて、実質の負担増は2千~3千円ほどになる。(後略)

日本の医療はどうなっていくのか?

大きな病院の利点は、複数の専門医が、同じ場所にいることでしょう。これによって、内科を受診してから、同じ場所で眼科や皮膚科に行くことも可能です。これに対して街の小さなクリニックは、専門性が固定されていることが多く、専門性の異なる複数の医師に同じ場所で会うことが困難です。

本来であれば、街の小さなクリニック同士が連携し、バーチャル総合病院のようになっていくことが理想です。そうなれば、大きな病院の受診と遜色なく、複数の専門医に診断と治療をお願いすることが可能になるからです。

しかし、こうした理想を実現するには「後医は名医」と呼ばれる問題が解決されないとなりません。そして、複数の医師の話を聞いていると、こうした問題の解消は容易ではないことに気づきます。

バーチャル総合病院の形成が難しい理由

街の小さなクリニックにとって、患者は大切な顧客なのです。そうしたクリニックが複数集まってバーチャル総合病院を形成する場合、個々のクリニックにとっては、他のクリニックに患者を取られてしまうということになります。

もちろん、医師の多くは、患者のためになることであれば、そうして患者を取られてしまっても仕方ないと考えます。しかし、一部の医師が、患者を囲い込むために、不必要に、紹介元のクリニックを悪く言ったりすれば、紹介元のクリニックには悪い評判がついてしまい、経営が成り立たなくなってしまうのです。

そうしたリスクから、小さなクリニックは、患者を他のクリニックに紹介することを躊躇します。面倒なことになるくらいなら「後医は名医」というタブーを犯さない、大きな病院に紹介状を書いてしまうクリニッックが増えてしまっても仕方がないのです。

しかしそうなれば、大きな病院が抱えている問題は解決しないばかりか、患者からしても、無駄に病院をたらい回しにされることにもなりかねません。非常に難しい問題ではありますが、いまのところは「後医は名医」のタブーを犯さない医師が増えていくのを待つしかなさそうです。

※参考文献
・朝日新聞, 『紹介状なしの受診、定額負担求める病院が増加 4月から』, 2018年1月25日05時00分

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