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介護業界において人材紹介サービスなどを提供する株式会社ウェルクス(本社:東京都墨田区両国)が、160名の介護職員から得たアンケート結果を公表しています(株式会社ウェルクス, 2017年)。
その結果として、アンケートに答えた160人の介護職員のうち、なんと97.5%までもが、人材不足を感じていたのです。そして、こうした人材不足の解消には給与の引き上げが必要とした人も、84.4%にも登りました。
過去になんども伝えている通り、介護業界の待遇(40歳モデル賃金)は、全63業界中でもダントツの最下位にあります。同時に、現在の日本は好景気になっており、企業の45.4%が人材不足に苦しんでいる状態です。このままでは、待遇の悪い介護業界から、他の業界に人材が流出してしまいます。
介護は、なかば慈善事業なのだから、給与の問題ではないという意見を聞くことが(まだ)あります。確かに、現在の介護業界には、そうした「聖人」としか言えない人材も多数います。しかし、2025年までには約38万人が足りなくなると言われる介護業界において、これ以上、そうした「聖人」だけを求めていくことは不可能です。
そもそも、現在就業中の4,551名に対する調査(HUFFPOST, 2015年)では、すべての年代(20代、30代、40代以上)が「働く理由」として「収入」を第1位に挙げているのです。そして、介護業界以外の業界でも人手不足によって、転職に対して、より良い待遇が提示されつつあるわけです。
この環境において、給与の問題ではないという意見は、介護業界を破壊してしまいます。もちろん「お金のことばかり気にする人材には来て欲しくない」という気持ちもわかります。介護の仕事は、金銭欲だけで務まるものではないからです。
とはいえ、すでに介護が必要な人に対しても、介護サービスを届けることができないという状況が生まれてしまっています。ミクロには、それぞれの介護事業者が「聖人」を求めていくことは自由です。しかし介護業界全体としては、他の業界よりもよい待遇を実現していかないと、介護難民が多数生まれてしまいます。
もちろん、国はこうした状況について理解はしています。少しずつですが、介護業界の待遇改善のために、施策は打ち出しています。特に最近では、消費税の10%への増税後には、介護業界の待遇改善のための財源が確保される見込みです。
しかし、この効果を KAIGO LAB 編集部にて試算してみたところ、この施策が実現したとしても、介護業界の40歳モデル年収は443万円となり、62位(百貨店業界)のモデル年収である452万円にも届きません。
売上が税金に依存している介護業界の人件費は(ほとんど)国によって定められていると言って過言ではありません。そうして定められる人件費が、全63業界中で最低というのは、いくらなんでもひどすぎると言わざるをえないのです。
介護業界が提供するのは、実質的には公共サービスです。公共サービスは、本来は公務員の仕事です。デンマークなどでは、介護職の多くが公務員だったりするのも、そうした理由があればこそです。そろそろ日本でも、まずは足りない人材を公務員によって埋め、将来的にはすべての介護職を公務員化するということも議論すべき段階でしょう。
※参考文献
・株式会社ウェルクス, 『現役介護職員160名にアンケート調査を実施!97%が「人材不足を感じる」一方で対策は「特にしていない」が4割』, PR TIMES, 2017年11月28日
・HUFFPOST, 『「あなたが働く理由は?」世代別にアンケートをとった結果、1位は◯◯だった。その目的は…』, 2015年6月25日
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