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金融機関の中でも収益力や待遇がトップクラスといわれるゴールドマンサックス(ニューヨーク本店)では、2000年には600人もいたトレーダーが、2017年には2人にまで絞られています。背景にあるのは、人工知能による自動化です。
日本の三菱UFJ、みずほ、三井住友の3大メガバンク(グループ)でも、今後、合計で3万2,500人分の業務量が削減されるようです。窓口業務などは伸び悩み、代わりにインターネットバンキングが急伸しているからです。
そもそも、人工知能による自動化は、マニュアルの成立するような業務であれば、なんでも置き換えることが可能です。その中でも特に、体を使うことがない知識労働であり、かつ、置き換えのターゲットとなる労働の人件費が高く、その人数が多いところから、業務の置き換えが発生していきます。
金融はその最たるものであり、次は医師や弁護士がそうしたターゲットになっていくでしょう。これらは、その業務に求められる知的レベルが高く、高賃金と呼ばれるような業務です。このような業務が徐々になくなっていくのが、今後の私たちが目にする世界になっていくでしょう。
そうした時代になっても高賃金が維持できるのは、人口知能が(まだ)持っていない知識を創造できる労働者だけです。人工知能がより高度な仕事をするために、人工知能を教育できる立場にある人材に仕事と富が集中するようになります。私たちに問われているのは、検索される情報の提供者であれるかということです。
もちろん、こうした人工知能による社会の構造変化は、ここまで極端なものにはならないかもしれません。今からおよそ100年前、自動車の登場によって、馬車などの馬具を製造していた人々が失業(摩擦的失業)しました。しかしその後、自動車産業が、そうした失業者を吸収していったという事例はたしかに存在しています。
ただ、この移行期間は、10年単位の期間を必要とします。また、マクロに見たときに、失業が減り、自動車産業で働く人が増えたというだけの話です。馬具メーカーに勤務していて失業した人が、本当に、自動車産業で働けるようになったのかはわかりません。
恐ろしいのは、人工知能というあらたな産業は、はじめから、自動車産業ほどに雇用の吸収力がないということです。そして残されるのは、人工知能の導入コストを下回るような労働だけという可能性もあります。こうした社会変化が、どれくらいの速度で起こるのかはわかりません。想像以上に時間がかかればよいのですが・・・
介護予防という視点からすれば、人間は、高齢者になっても、仕事を続けたほうがよいのです。それにより、社会との接点を維持し、社会から必要とされることから賃金を得て、その賃金で消費活用をするほうが、心身の健康を保ちやすいからです。
しかし、金融機関などでの大リストラがはじまっており、高賃金な労働はどんどんその数を減らして行きます。同時に、自動運転技術などの発展によって、一般に残される雇用は、本当に厳しいものになるかもしれないのです。今は景気がよいので、そうした部分が見えにくくなっていますが、将来は本当に不安です。
高齢者が労働力として求められなくなり、さらに現役世代もまた低賃金な労働に押し込められる可能性があるのです。そうなれば、要介護状態になる高齢者が増えるだけでなく、社会福祉を維持するための税収も減ってしまいます。
人工知能によって儲けを出すところに対して大きな税金をかけることは、いずれ議論され、実現されていくことでしょう。それでもなお、雇用は増えないとするなら、ベーシックインカムしか解決策はありません。せめて、今のうちからベーシックインカムの整備の準備を開始しておくべきだと思うのです。
※参考文献
・Gigazine, 『人工知能による自動化が進むゴールドマン・サックス、人間のトレーダーは600人から2人へ』, 2017年2月8日
・SankeiBiz, 『3メガが大規模リストラへ 3万2000人削減 三菱UFJは店舗2割統廃合も』, 2017年10月30日
・孫 泰蔵, 『AIが雇用を奪うとどうなるか』, ダイヤモンドオンライン, 2017年10月30日
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