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地方自治体でも、非正規の労働者(非正規職員)が増えてしまっています。こうした非正規職員は、公務員としての各種の福利厚生が受けられないばかりでなく、低賃金で不安定な労働を強いられているのです。以下、Yahoo!ニュースの記事(2017年10月3日)より、一部引用します(改行位置のみ、KAIGO LABにて修正)。
全国の地方自治体で非正規職員が急増している。総務省が2016年4月現在で実態調査したところ、都道府県、市区町村を合わせて64万人に達し、2005年に比べて4割も増えていた。退職者補充を非正規で対応してきた結果で、自治体が官製ワーキングプアを大量生産している格好。
地方自治総合研究所の上林陽治研究員は「このままでは雇用の劣化が行政サービスの低下を招きかねない」と警鐘を鳴らす。5月に待遇改善を求めて地方自治法、地方公務員法が改正されたが、問題解決には悲観的な見方が出ている。(中略)
市は公営ギャンブル収入で豊かな財政を誇った時代もあったが、行政組織の肥大が財政を圧迫するなどし、財政健全化を推進してきた。その結果、退職した正規を非正規に置き換え、人件費を抑えるうちに非正規比率が高まった。2005年の14%が2016年で31%に上昇している。(中略)
弱い立場の非正規にしわ寄せし、行政サービスを維持する現状は、自治体のあるべき姿とはいえないだろう。自治体は非正規の待遇を改善するとともに、中長期的な視野に立ってどのような人員体制が適切なのか考え直す必要がある。
そもそも日本の場合、非正規の労働者は、正規の労働者と同じ仕事をしていても、各種の権利がなく、非常に悪い待遇で働かされていることがほとんどです。一部には、自分で希望して非正規を選択している人もいるでしょう。しかし、悪い待遇を望んている人はいないはずです。
そうした悪い待遇を押し付けられている人、すなわち非正規の労働者の75%は女性です。日本における収入の男女格差は、もはや差別と言っていいレベルで開いています。以前、男女の収入格差については、アメリカとの比較を取り上げています。
日本の場合は、過去30年という期間にわたって、女性の収入は男性の収入の半分程度にすぎません。これに対してアメリカは、過去30年の間にこの格差を縮小させてきています。アメリカでは、1980年代には男性の65%程度だった女性の収入も、いまでは85%程度までになっているのです。
このような格差が生まれてしまう背景には、非正規の存在が非常に大きいわけです。そして、非正規が生まれてしまう背景には、年功序列を前提とした、古い日本型の給与の決まり方(職能給制度)があります。
世界的には、同じ仕事であれば、同じ賃金であること(同一労働同一賃金)が進んでいます。そこでは、能力や経験によらず(職能によらず)、実際にやっている仕事の内容によって給与が決まるという方法(職務給制度)が採用されているのです。
長年、仕事をしていれば、能力や経験は成長します。職能給制度においては、それに応じて給与が上がるわけです。しかし、やっている仕事の中には、そこまでの能力や経験を必要としないものも多くあります。そこで、それを非正規の労働力で補ってしまっているわけです。
職能給制度で働く正規の労働者は、やっている仕事以上に給与をもらっていることも多くなります。それは、客観的にみれば不当に高いことになるわけで、不当に高いお金が正規に流れる分だけ、非正規の労働者には不当に安いお金しか流れなくなるという仕組みができてしまっているのです。
介護の仕事は、警察や消防の仕事と同様に、ストライキを起こすと人命が失われるような仕事です。ストライキを起こす権利がない場合、労働条件では雇用主と争うことが難しくなります。そうなると、雇用主の奴隷のようになってしまうため、ストライキが起こせない仕事は、公務員として保護する必要があるのです。
北欧諸国では、こうした背景から、介護職の多くが公務員として扱われているところもあります。しかし日本では、介護職は、全63業種中、ぶっちぎりの最下位という待遇になってしまっています(40歳モデル賃金のランキング比較)。
そう考えたとき、日本では、本来は公務員として扱われるべき介護職が、官製ワーキングプアになっているとも言えるわけです。このままの状態を放置すれば、2025年を待つことなく、介護職は大幅に不足し、介護は受けたくても受けられないという時代になってしまいます。なんとか、官製ワーキングプア問題を改善しないとならないのです。
※参考文献
・Yahoo!ニュース, 『地方自治体で非正規職員が急増、「絶望的な格差」は法改正で解消できない』, 2017年10月3日
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