KAIGOLABの最新情報をお届けします。
介護職の待遇問題は、日本の未来のために、すぐにでも解決すべき最重要課題の1つです。当然、厚生労働省は、それを理解しています。ただ、どうしても、日本に残されている厳しい社会福祉財源の前では、なかなか手が打てないという状態にあります。それでも、少しずつではあっても、介護職の待遇改善につながる施策は打ち出されてきました。
そうした中、あらたな施策が検討されつつあります。それは、介護に関する高度な技術を持っている介護福祉士を、介護のチームリーダーとして位置付け、そこに特別な手当をつけていこうというものです。介護の専門職として資格を受ければ、それに資格手当がつくような単純な話なのですが、威力はあります。以下、朝日新聞の記事(2017年9月26日)より、一部引用します。
厚生労働省は、介護現場で経験を積んだ介護福祉士を「チームリーダー」と位置づける方針を決めた。介護職員がキャリアアップできる仕組みをつくることで離職を防ぎ、人手不足を和らげる狙いだ。賃金をほかの介護職員より手厚くすることも検討していく。(中略)
介護福祉士は国家資格だが、いまはほかの介護職と仕事内容や賃金に大きな差がないことが多い。このため、離職する介護福祉士が後を絶たないとされる。(中略)5年程度のキャリアがある介護福祉士が研修を積んだら、介護職のまとめ役となる「チームリーダー」とすることを提案した。
日本の介護事業者は、赤字のところが多く、毎年、多数の倒産が出てしまっています。そうした状態ですから、今はなんとか黒字で頑張っている介護事業者であっても、人件費が少しでも高くなると、すぐに倒産してしまうような環境にあります。ですから、少なからぬ介護事業者は、人件費の高いベテラン職員よりも、学生あがりの未経験の職員を好むようにもなってしまっています。
この背景には、介護サービスの料金は、提供する人材のレベルによらず、一律同じに設定されているからです。たとえ品質に問題のあるサービスであっても、人件費の安い人材を配置したほうが、介護事業者は儲かるという仕組みになってしまっているのです。これでは、キャリアパスもなにも、あったものではありません。必死に勉強をして、介護福祉士の国家資格を取得しても、賃金には差が生まれません。
ここにもし、5年程度の経験がある介護福祉士に対して、チームリーダーとしての公的な資格を追加で付与し、そこに国からの手当が支給されたら、どうなるでしょう。まず、介護事業者は、未経験の新人よりも、できるだけ経験のあるチームリーダーを採用したくなるでしょう。経験の浅い人材にも、一生懸命勉強してチームリーダーになるというインセンティブが生まれます。結果として、現場の介護レベルは高くなっていくはずです。
現在、日本には約120万人程度の介護福祉士がいます。まずは、このうちの20%程度(5人に1人)をチームリーダーとして、それぞれに5万円程度の資格級を与えたとします。すると、120万人x20%x5万円=120億円です。これは、日本の税収55兆円の、0.02%にすぎません。これは、それほど非現実的な数字ではないはずです。これだけの金額で、介護職の離職が減り、日本の介護現場のレベルが上がるのであれば、安いものではないでしょうか。
まずは、ここからはじめて、チームリーダーの中でもさらに突出した人材は、公務員にしてしまうという方向性も検討してもらいたいです。公務員は、日本の学生の就職先ランキングで毎年1位になるような職種です。そんな公務員になる道が、介護職の頂点になっていくというのは、希望のある話だと思います。なお、介護職の公務員化は、非現実的な話ではなく、デンマークなどでは実現されている究極のあり方です。
今回のニュースは、実際に、リームリーダーに支給されることになるお金の金額によっては、意味をなさないものになります。ここでなんとか、しっかりと財源を確保し、思い切った待遇の改善がなされれば、日本の介護にも希望が出てきます。単純な施策ではありますが、支給される金額によっては、かなりのインパクトを出せるものです。厚生労働省の皆様には、ぜひ、頑張ってもらいたいです。
※参考文献
・朝日新聞, 『介護福祉士をチームリーダーへ、離職防ぐ 賃金増も検討』, 2017年9月26日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。