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毎日8,000歩で、還付金が出る医療保険が登場!そんなに歩ける?(ニュースを考える)

毎日8,000歩で、還付金が出る医療保険が登場 / 毎日8,000歩とは、具体的にどういうことか?(ニュースを考える)

ウォーキング(歩くこと)の効果について

ウォーキングが、人間の健康に与える影響は、広く研究されてきました。ウォーキングには、心筋梗塞や脳梗塞につながるメタボリックシンドローム(メタボ)を防ぐ、生活習慣病の予防としての側面があることは誰もが知っていることでしょう。

メタボ予防以外にも、気分転換や食欲の増進といった、高齢者の健康寿命に直結するようなところにも、ウォーキングは威力を発揮します。糖尿病と診断された場合でも、1週間に2時間ウォーキングをすると、死亡率が39%も低下することがわかっています(国土交通省)。認知症の予防にもなります(徳田, 2012年)。

さらに、日本ウオーキング協会は、ウォーキングには「健康・環境・教育・観光・交流」という「5つのK」を達成する、重要な手段であると位置付けています。健康面における効果以外にも、ウォーキングには、様々な社会的な意味もあるのです。これは、引きこもりがちになる高齢者にとって、介護予防として機能します。

ウォーキングをするとお金がもらえる保険が登場?

ウォーキングが健康を増進させることは、数多くの研究が示してきたとおりです。今後も、さらに多くの効果が発見されていくことでしょう。そしていま、ウォーキングをすれば還付金がもらえるという生命保険が登場し、話題になっています。以下、日経新聞の記事(2017年4月2日)より、一部引用します。

東京海上日動あんしん生命保険とNTTドコモは、1日の歩数が8000歩を超えると還付金が出る医療保険を売り出す。健康への取り組みを保険料に反映させる仕組みで、腕に巻くウエアラブル端末を貸し出し歩数を毎日計測してもらう。IT(情報技術)を商品開発に生かす動きが保険業界で活発になってきた。(中略)

無償で貸与するウエアラブル端末と、NTTドコモが開発したスマートフォン(スマホ)向けのアプリケーションを接続。2年間にわたり、1日あたりの歩数が平均で8000歩を超えると3年目に年1200~3600円程度の還付金を受け取れる。入院給付金が日額1万円の医療保険に30歳男性が入った場合の保険料は月3000円程度が標準的なので、最大で1カ月分の保険料が戻る。(後略)

この生命保険の狙いは、より多くの人に保険を買ってもらうことだけではありません。最終的には、ユーザーの体温や脈拍などのデータ(バイタル・データ)を取得し、それと各種病気との関係性を理解することが目的です。これによって、保険会社は、より正確に健康リスクを把握できるようになり、競合よりも安くて中身のある保険が設計できるようになるのです。

そもそも毎日8,000歩を歩くことができるだろうか?

8,000歩というと、身長170cm、体重70kgの人が、普通の歩幅(身長x0.45)、普通の速度(4km/h)でこなした場合、約6kmの距離を約90分で歩く計算になります。これを毎日続けることは、なかなかに大変なことです。いかにこれが平均だったとしても、達成できる人はわずかでしょう。

そもそも、これだけの距離を毎日歩こうという人は、健康意識も高く、病気になりにくいタイプに分類されると思われます。「毎日、6kmくらいなら、もう歩いてるよ」という人にとっては、保険料が安くなるし、お買い得感があります。しかし、この還付金が欲しいから、もっと歩こうという人は少数だと考えられるのです。

保険会社としては、不健康な人に保険を売ってしまい、結果として高い保険料を支払うのは避けたいわけです。であれば、この保険のように、すでに健康意識の高い人に対して、還付金を出しながらでも、保険を売り込んだほうが得という算段になります。

※参考文献
・国土交通省, 『「歩く」効果・効用とそれを習慣化する方法の整理』
・徳田 救仁郷, 『ウォーキングのすすめ』, 医療法人青仁会/健康だより(vol.56), 2012年10月号
・日本経済新聞, 『医療保険、1日8000歩で還付金 東京海上とドコモ』, 2017年4月2日

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