KAIGOLABの最新情報をお届けします。
KAIGO LAB でも、過去にもなんども取り上げてきましたが、介護職の待遇は、その価値に見合わない状態が続いています。全産業平均からも、年収ベースで100万円以上も安く、月の手取りが20万円を切るようなケースも多数あります。
この問題は、厚生労働省も把握しており、不足する財源の中でも、なんとか改善しようと努力を続けています。その効果は、十分とは言えないものの、とにかく前には進んでいます。
まずは、厚生労働省の努力自体については、承認されるべきでしょう。同時に、その効果については、今後も、皆で議論しながら、ずっと継続されていくべきものであることは言うまでもありません。以下、産経新聞の記事(2017年1月19日)より、一部引用します。
厚生労働省は18日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)介護給付費分科会で、介護職員の給与を月平均1万円増やすため、介護保険サービス事業者に支払う介護報酬を4月に臨時改定し、1・14%引き上げる方針を明らかにした。
介護報酬は利用者の自己負担(1~2割)、保険料、税金で賄われており、今回の臨時改定に伴い、利用者の自己負担が増えるほか、40~64歳が支払う保険料も月60円程度高くなるとみられる。65歳以上の保険料は変わらない見通しだ。
介護事業所が(1)勤続年数(2)介護福祉士など資格の有無(3)実技試験や人事評価の結果-のいずれかに応じた昇給の仕組みを就業規則で設けた場合、月額1万円相当の報酬を加算する。7割の事業所が条件を満たすとみられる。
今回、1.14%引き上げるとはいえ、2015年度の介護報酬改定では、2.27%もの引き下げがあったことは忘れてはなりません。今回の引き上げ自体は歓迎されるものですが、2015年度の引き下げ前の水準には戻らないことを思うと、どうしても暗い気持ちになります。
こうした状況から、介護事業者の倒産も続いています。きちんと介護保険を収めていても、近隣に介護サービスを提供してくれる介護事業者がなければ、どうにもなりません。今後は、介護職の報酬改善だけでなく、介護事業者の救済も必要です。
また、繰り返しになりますが、月額1万円程度の改善では、年収ベースで、全産業平均から100万円以上安いという状況は変わりません。この事実があるのに、介護職の人材不足を嘆いても仕方のないことです。
厚生労働省には、日本の介護職を公務員とすることを検討してもらいたいです。2025年までに足りないと言われている介護職の数は、38万人にものぼります。ここも、追加で雇うのではなく、公務員の人材配置を最適化させることで対応できないか、考えてもらいたいところです。
そもそも、デンマークなどでは、医療職や介護職は、公務員であることが普通です。これは、医療職や介護職は、待遇が悪いからといって、ストライキを起こすことが実質的にはできないからです。この人々がストライキを起こすと、患者や要介護者には、命の危険があるからです。
そもそも、公務員の待遇は全産業平均以上です。福利厚生も充実しています。ですから、介護職が公務員になれば、介護職になりたいという人も増えるでしょう。介護が、日本の社会福祉の主戦場となりつつあります。それを踏まえて、国家のグランドデザインを考え直す時期にきていると思うのです。
※参考文献
・産経新聞, 『介護報酬1.14%引き上げ方針 職員給与を月平均1万円増額 厚労省』, 2017年1月19日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。