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自分のことを中流だと考えている人が、日本国民の9割だという結果が出ています。これは、かなりおかしな認識なのです。まずは、朝日新聞の記事(2016年12月22日)より、一部引用します。
内閣府の国民生活に関する世論調査によると、いまだに全体の約9割が中流だと考えている。(中略)日本では、非正規雇用の割合が4割を超え、平均所得以下の人たちが6割を占める。
格差是正を訴えるリベラルの戦略は一見正しく映る。だが、多くの低所得層が「自分は下流ではない」と認識していたらどうか。生活不安に怯(おび)えているのに政治的に取り残された中の下層は、格差是正の訴えを聞けば聞くほど、低所得層への反発を強めるのではないか。
自分自身が下流であることを認識していない人は、格差是正と言われると、自分の負担が上がると考えてしまいます。本当はその逆で、自分自身が助けられる側かもしれないのです。とにかく、先のトランプの当選でも考えたとおり、格差是正は、世界でも緊急の課題です。
政府統計の資料(厚生労働省, 2015年)には、日本にはもはや、中流と呼べるような人は少数であることが示されています。この資料をベースとして、以下、世帯の所得に関するデータをグラフにしてみます。
日本における世帯の平均所得は541.9万円でした。この平均以下の世帯は、全体の61.2%になっています。実に、6割以上の世帯が、平均所得を下回っているのです。高齢者世帯に限ると、平均所得は297.3万円まで落ちます。
日本は民主主義国家ですから、この6割の人々が格差是正を訴えれば、多数決で勝てるはずなのです。それでもなお、格差是正は、人々が注目するテーマになっているようには思えません。この背景には、9割の人が、自分は中流だと考えていることがあるでしょう。
もちろん、なにをもってして中流なのかという定義の問題は残ります。ただ、このグラフを見て、9割の人が中流というのは、さすがに無理のある話のように思われます。中流は、もはや消滅していると考えたほうがよいのではないでしょうか。
東洋経済オンラインの記事(2014年10月15日)によると、在宅介護で必要になるのは月平均で7万円程度とされます。遠距離介護だと、これに交通費がかかります。病気をして、手術となり、入院でもしたら、この金額では済みません。
自分に介護が必要になった場合は、約6割の人が、在宅ではなく、老人ホームのような施設介護を望んでいるといいます。しかし、民間の老人ホームは、入居費が25万円程度かかるのが普通です。高齢者世帯の平均(297.3万円)では、実質的に入居できません。
国の社会福祉財源は枯渇してきていますから、今後は、医療や介護にかかる費用の自己負担部分は増えていきます。そうなると、在宅介護すらままならない人が増えていくことになります。
世帯年収が平均を下回ったとしても、しっかりとした医療や介護が受けられるのであれば、それはそれで中流なのかもしれません。しかし、現役時代の年収が1,000万円を超えるような人でさえ、ギリギリの生活をしているという現実を見る必要があります。
介護は、誰もが必ず経験することになる、人生の晩年における大きな事件です。民主主義社会において、未来に責任があるのは、私たち一人一人です。ですから、人生の晩年になってから「生活できない」と嘆いてもしかたがないのです。
みんなで、格差の是正を考え、社会福祉の充実に動く必要があります。一度はこれが崩壊することは避けられないかもしれませんが、少しでも改善していかないと、本当に大変なことになります。
※参考文献
・朝日新聞, 『中の下の反乱、食い止めよ 井手英策』, 2016年12月22日
・厚生労働省, 『国民生活基礎調査の概況/各種世帯の所得等の状況』, 平成27年
・東洋経済オンライン(AERA編集部), 『いったい、介護費用は月にいくらかかるか?』, 2014年10月15日
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