KAIGOLABの最新情報をお届けします。
介護事業者の経営破綻が増えてしまっています。原因は簡単で、介護が儲からないからです。経営学的な視点からすると、介護というのは、変動費(売り上げに比例して、コストも上がる)ビジネスです。
いかに要介護者が増え、売り上げが高まったとしても、その分だけ、プロの介護職が必要になります。しかし、一旦は、要介護者が増えることで高まった売り上げも、要介護者が数名亡くなってしまえば、すぐに赤字になります。結果として、破綻しやすいビジネスなのです。
さらに悪いことに、国は、介護のための財源が不足しているという理由から、介護サービスの報酬を減らしています。このため、売り上げは頭打ちどころか減らされる方向にあります。同時に、人手不足から、介護職の待遇改善が必要な状態にあり、経営破綻は今後も増えてしまうのです。
高齢化によって、要介護者の数は増えています。しかし、介護事業者の経営状態はどんどん悪化しています。すると、介護職の給与も頭打ちになることは避けられません。しかし、介護の仕事の総量は減るどころか、増えているのです。
そうなると、介護業界ではサービス残業が蔓延することになります。この実態調査に関する報道が、朝日新聞(2016年12月27日)になされました。この報道の一部を、以下に引用します。
介護の現場で月給制で働く人のうち、半分が残業した時間を正確に申告していない――。介護職員らの労働組合「日本介護クラフトユニオン」の調査で、こんな実態が分かった。理由については、4割強が「申告しづらい雰囲気」を挙げた。(中略)
月給制の人のうち、「残業時間を正確に申告していない」と答えたのは47%。「申告している」は51%だった。「申告していない」とした人に複数回答で理由を尋ねたところ、「申告しづらい雰囲気があるから」が44%で最も多く、「自主的に残業しているから」(25%)、「申告しても残業を認めてもらえないから」(23%)が続いた。
この報道のうち「自主的に残業しているから」という回答は、そもそも「やりがい搾取」です。また「申告しても残業を認めてもらえないから」というのも、辛いです。介護事業者としては、これを認めてしまうと赤字になり、経営破綻してしまうからでしょう。
短期的には、混合介護を進めて、介護保険の適用されない介護サービスを増やしていくしかないでしょう。そうなると、お金のない人は、通常の介護サービスを受けることも困難になります。しかし、そうしないと、介護業界のサービス残業はなくならないでしょう。
こうした報道があると「介護事業者は悪徳だ」といった批判が必ず起こります。しかし、ここまで考えてきたとおり、この批判は的外れです。もちろん、どこの業界にも、多少の悪徳業者はいます。ですが、そもそも介護業界の構造自体が「低賃金の労働いたしかたなし」という形をしているのです。
これは、お金の問題です。今後も増え続ける要介護者に対して、そこに流れるお金の総量は足りていません。もはや2025年問題の爆発は避けられない状況です。それこそ、相続税を100%として、そこから医療と介護のための費用を出すくらいの変革をしないとならないのですが、それは無理でしょう。
「自分はなんとかなるだろう」というのは、正常性バイアスにすぎません。私たちの多くは、このままでいくと、悲惨な介護を経験することになります。このとき、介護事業者を責めても、ない袖は振れないですから、どうにもなりません。
※参考文献
・朝日新聞, 『介護職の半数「残業時間、正確に申告せず」 労組調査』, 2016年12月27日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。