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人口減少社会においては、空き家はどんどん増えていきます。空き家は、放置しておくと、周辺の治安が悪化することが知られています(=環境犯罪学/割れ窓理論)。なお、本稿における空き家からは、貸したいのに借りてがいない住居や、別荘として空いている住居を除いて話を進めます。
全国の自治体では、この問題を重くみて、空き家対策について、空き家管理条例の制定とともに、たくさんの議論が積み上げられてきています。様々な施策も、少しずつではあっても進んでいるのですが、根本的なところで、つまづくことが多いのです。
このつまづきには、2つのポイントがあります。一つは、その空き家の持ち主がわからないということです。登記簿を見ても、その持ち主に連絡がつかないということはよくあるようです。
もう一つは、空き家の持ち主が、その物件を、他人に貸したがらないということです。老朽化が進む空き家を貸しても、月に数万円にしかならないことがほとんどです。それでは、管理費さえ出ないことも多いのです。かと言って更地にすると、固定資産税が増えたりもします。
さらに、家賃の支払いをめぐってトラブルになったりするのも心配です。家賃の支払いが遅れたり、最悪は、そこで孤独死されてしまうと、とても面倒なことになります。空き家の持ち主としては、いっそ、放置しておくほうが氣分も楽というケースが多いのです。
こうした空き家に対する対応としては、その価値を見定めた上で(1)解体を進める(2)新たな活用法を見つけて活用する、という2つがあります。全ての空き家が有効活用できるわけではないのは当然です。むしろ、有効活用できる物件のほうが珍しいとも言えます。
たとえば、雰囲気のある古民家を、カフェ、宿泊施設、シェアハウスとして再生するという話はよく聞きます。調査研究資料でも、空き家活用の成功事例として、よく取り上げられたりもします。ただ、こうした成功事例は全体のごく一部であるという認識も大事です。
こうした事例を増やしていくには、その物件を有効活用してもいいという空き家の登録を進めることが大事です。これを特に「空き家バンク」と呼び、全国の自治体で、それぞれに特色のある活動がはじまっています。
同時に「空き家バンク」の設置・活用については、成功と失敗の色分けも明確になってきています。ここでの成功要因は、空き家のオーナーからの「空き家バンク」への登録を待つのではなく、自治体やNPOが連携して、オーナーの説得にあたれているかどうかです。
そして、最終的には、オーナーの不安を払拭すべく、改修費用や家賃部分への補償などについて、自治体が責任を持っていくことでしょう。簡単なことではありませんが、日本の未来のためには大切なことです。
空き家を、カフェ、宿泊施設、シェアハウスといった形での活用ができたら、そこからの収入も上がりますから、最高です。その収入によって、設備を新しくしたりすることができるだけでなく、地域における交流人口も増やせるからです。
しかし、どんどん増えていく空き家の全てを、こうした形で利用していくことは困難です。日本では、世界と比較しても、公営住宅が足りないと言われます。であれば、こうした空き家は、プライバシーに配慮しつつ、低所得者向けの住宅として整備していくことが有効でしょう。
政府によって、このための予算が計上されるようです。これはとても嬉しい変化です。以下、NHK NEWS WEBの記事(2016年12月18日)より、記事の一部を引用します。
所得の低い子育て世帯や高齢者向けの住宅として空き家を有効に活用するため、リフォームの費用や家賃の一部を補助する新たな制度が、政府の来年度予算案に盛り込まれる見通しとなりました。
新たな制度は全国各地で公営住宅の老朽化が進み、今後、所得の低い若い子育て世帯や高齢者向けの住宅の確保が課題になるとして、国土交通省が創設を求めているものです。
具体的には、自治体が耐震性など一定の基準を満たした空き家や賃貸住宅の空き部屋を、所得の低い人向けの住宅として登録し、活用します。そして、空き家をリフォームする費用の一部や、入居者が支払う家賃の一部を国と自治体が補助する仕組みです。
こうした住宅が整備されていけば、民間の住宅も、これに引きずられるようにして、賃料が低下していくでしょう。日本の競争力にとって、高すぎる地代家賃はマイナスです。この政策が、長期的に、日本の国力増強によい効果をもたらすことを期待しています。
※参考文献
・米山 秀隆, 『空き家の現状と利活用の取り組み』, 国民生活, 2014年11月
・米山 秀隆, 『空き家対策の最新事例と残された課題』, 富士通総研経済研究所, 研究レポート(No.416), 2014年5月
・NHK NEWS WEB, 『子育て世帯や高齢者向けに空き家活用へ 来年度予算案』, 2016年12月18日
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