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高齢者の身元保証サービス(日本ライフ協会)が破綻(ニュースを考える)

高齢者の身元保証サービスが破綻へ

求められる高齢者の身元保証

以前に『連帯保証人がいなくても、介護施設に入ることができる?嬉しい保険が登場してきている。』という記事でお伝えしたとおり、高齢者は、身元保証や連帯保証などの設定に悩むことが多くあります。

ここは、多くの企業から成長分野と目されており、今後の新規参入も増えていくと思われます。そうした流れの中で、残念ながら、不正によって破綻する業者が出てきました。以下、毎日新聞の記事(2016年10月27日)より、一部引用します。

身寄りのない高齢者に身元保証サービスを提供する公益財団法人「日本ライフ協会」が高齢者から受け取った預託金を流用していたことが今年1月に発覚し、経営破綻した。身元保証のサービスを必要とする高齢者は多いが、事業者に対する監督官庁や規制はなく、国も実態はつかめていない。

この日本ライフ協会には、約2,500人の高齢者が会員としてお金を支払っていたそうです。しかし、今年の1月に、この協会が高齢者から受け取っていた約8億8,000万円のうち、約2億7,000万円が消えていることが発覚しました。負債総額も約12億円にもなり、依託金が会員だった高齢者のところに戻ってくるかも不明とされます。

注意したいのは、今回の事件を起こしたのは、内閣総理大臣、または都道府県知事の認定を受けているはずの公益財団法人です。日本ライフ協会も、一般社団・財団法人法に基づいて設立されている、国による「お墨付き」をもらっている組織だったのです。

営利企業の立場から高齢者について考えてみると・・・

営利企業からすれば、高齢者となんらかの契約を結ぶことは、リスクが高いものです。たとえば、不動産の大家からすれば、部屋を貸している高齢者が、いつかその物件で孤独死をしてしまわないか不安です。

亡くなってしまった人からは、家賃を取ることもできません。また、不動産の修繕費用(清掃や床板などの張り替えなど)が巨額になる場合もあります。さらに無視できないのは火災です。高齢者による火災死亡事故は、火災による死者数全体の6割以上を占めています。

このようなリスクを、なんの後ろ盾もなく、営利企業が負担することは困難です。だからこそ、身元保証や連帯保証の設定をすることで、なにかがあった場合、その責任を問える相手を確保しておきたいと考えるわけです。これは、従業員の生活も守らなくてはならない営利企業の立場からすれば、仕方のないことです。

なんのために国があるのか?

なにも「国の存在意義」という大上段に構えなくても、そもそも国家とはフィクションです。ただし、そのフィクションは、そこに属する人々が期待する仕組みを実現しようとする限りにおいて、存在が認められている(納税の義務を受け入れる)ものではないでしょうか。

私たちは、誰もが高齢者になります。そのとき、身元保証や連帯保証をしてくれる人を探し、申し訳ないと頭を下げるような人生を望むのでしょうか。運悪く、そうした人が見つからないとき、身元保証サービスや連帯保証サービスにお願いし、だまされるような人生を望むのでしょうか。

このような、国民の大多数に共通する大きな問題について、国が救済の仕組みをつくれないとするなら、その国のフィクションは崩れるでしょう。特に、この高齢者の身元保証と連帯保証の問題については、本来は国が責任を負うべきところです。

とはいえ、日本の社会福祉財源は枯渇しつつあります。この責任を負うだけの資金が国にないのであれば、公益法人も含めた民間の保証サービスにおいて、今回のような事件が起こらないよう、また、起こってしまった場合の最終的な保証だけでも国が引き受けるような、そうした仕組みが求められます。

※参考文献
・毎日新聞, 『高齢者向けサービス破綻 身元保証業、規制を議論』, 2016年10月27日
・読売新聞, 『「日本ライフ協会」破綻~おひとりさま、身元保証はだれに頼めば…』, 2016年4月1日
・住宅防火対策推進協議会, 『消防本部の実施施策と高齢者の実態に関する調査研究』, 平成26年3月

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