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介護における虐待問題から、最近はますます「抱え込まない」という助言が周囲にあふれるようになりました。「抱え込まないこと」は、確かに、大事なことです。KAIGO LAB でも、この点について、言及してきました。
しかし・・・
ある方からの指摘で、とても大事なことに気がつきました。それは、現在、介護の重圧の中にいる介護者に対して「抱え込まないで!」と直接伝えることが、非常に残酷なことであるという事実です。
介護の負担に押しつぶされそうになっている人の多くは、助けてくれる人を探しています。各所に相談もしています。それでも、どうしても解決できない課題が残り、その負担に苦しんでいるのです。
そうした人に対して「抱え込まないで!」といえば、どう感じるでしょう。「じゃあ、あなたが介護をかわってよ」「抱え込まないですむ方法を教えてよ」「自分が抱え込まない場合、要介護者が死んでしまう場合はどうするの」といった気持ちにもなります。
Aさんは、倒れそうなくらい、重たい荷物を背負っているとします。重たいのですが、非常に大事な荷物で、捨てていくわけには行きません。Aさんに対して「背負いすぎないで!」と、Bさんが声をかけてきたとしましょう。
Aさんは、当然、Bさんが荷物を運ぶことを手伝ってくれると思うでしょう。しかし、Bさんは「背負いすぎないで!」と言っただけで、その場を離れて行ってしまうのです。Aさんは、自分を助けてくれる人などいないと、絶望してしまいます。
繰り返しになりますが、介護を「抱え込む」のはよくないことです。しかし、負担の大きい介護をしている人は、好きで「抱え込んでいる」わけではないという大前提を理解する必要があります。介護をしている人も「抱え込む」のが悪いことだということくらい、わかっているのです。
よくないことだとわかっていても、それが苦しくて仕方がなくても、自分以外に介護をしてくれる人がいないのです。こうした状況にある人に対して「抱え込まないで!」というからには、自分がその人の介護を手伝うか、もしくは介護の負担を減らすための具体的なアドバイスとセットでないと、意味がありません。
意味がないどころか、むしろ、孤独であることが強調されるので、とても辛いです。
本当に、介護に苦しむ人のことを想っているのなら、まずは、その人の置かれている状況をできるだけ正確に把握する必要があります。要介護者の要介護度、認知症のあるなし、世帯の経済力といったことを知らないなら、何も言えないはずです。
その上で、自分に手伝えることや、具体的なアドバイス(よい介護サービスが安く受けられるなど)が思い付くなら、それを申し出ることは大事なことです。介護に苦しんでいる人は、それで助かるなら、本当に嬉しいです。
しかし、自分に手伝えることがなかったり、具体的なアドバイスができるほどの知見がないのなら、安易に「抱え込まないで!」という発言をすることは控えるべきです。
介護を1人でやっている人は、無人島で孤立しているようなものです。そうした人に、上空をヘリコプターで旋回しながら「孤立しないで!」と叫ぶのは、ただどこまでも残酷なだけなのです。
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