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介護の負担は人任せなのに、余計なことばかりする家族は実在する。

余計なことばかりする家族

介護家族の位置付けについて

介護家族といっても、様々な家族の位置付けがあります。大きく分類すれば(1)同居して介護に直接関わる家族(2)同居していても介護に関わらない家族(3)別居していても介護に関わっている家族(4)別居していて介護にも関わっていない家族、の4分類になるでしょうか。

要介護者にとって、一番大きな影響を及ぼすのは(1)同居して介護に直接関わる家族(主介護者)です。しかし実は、その主介護者に対して影響を及ぼすのは、その他の、特に介護に直接関わらない家族の言動や行動です。

介護の負担はほとんど負わないのに、口だけ出すといえば伝わりやすいでしょうか。お金だけ出して、口を出さないような家族は歓迎したいですが、その逆で、口だけ出すという家族は少なくありません。

本当に迷惑な家族;4つの典型例

以下、このように、要介護者にとっても、主介護者にとっても良くない影響を与えてしまう家族について、4つの典型例を示してみます。自分が介護にあまり関わっておらず、兄弟姉妹などに介護を任せている人ほど、注意してもらいたいです。

1. 要介護者の介護の必要性を軽んじる家族

たまに要介護者に会ったり、電話をするだけの関係だと、要介護者の普段の様子や、認知症の状態などが見えにくくなります。むしろ、主介護者が訴えるよりも、介護状態が軽いのではないかという印象を持ってしまうことのほうが多いものです。

別居している家族は、要介護者の衰えを目の当たりにしていないので「(親には)元気であってほしい」という願望も入るのでしょう。そこから「元気そうじゃない」「言うほどひどくはないね」という感想になってしまいます。

ひどい場合は、主介護者に対して「介護をやっていることをオーバーに言い過ぎじゃないか」という、主介護者の苦労を軽視する態度につながり、主介護者を追い詰めてしまうこともあります。

2. 主介護者の介護のリズムを乱す家族

主介護者は、要介護者の混乱や行動を日々目の当たりにしつつ、日常のスケジュールをこなすために、独自のリズムを編み出しています。ある程度スケジューリングされた生活の中で、自分自身の心身の負担をコントロールしながら、要介護者を介護しているのです。

この苦労をよそに、別居家族はたまに会いに来て、要介護者を外食へ連れだしたり、孫の顔を見せたりして、要介護者を喜ばせようとします。これは悪いことではありませんし、その気持ちは十分に理解できます。

しかし大事なのは、それが、日々の介護を担ってくれている主介護者の負担にならないかを確認することです。別居家族が「良かれと思って」刺激を与え、帰った後に、大混乱したり夜間に興奮して寝られず主介護者の負担にしかならなかった、という話は実によくあることです。

関わることが悪いわけではなく、主介護者に注意点を確認しながら関わることが大切なのです。

3. 必要以上に経済面への口出しをする家族

要介護者の介護には、とてもお金がかかります。それは介護生活が長引くほど増えます。介護サービスの自己負担だけでなく、医療費、薬代、オムツなどの消耗品、通院や移動にかかる交通費などは必要最低限です。

これに食費などの日常生活費や、場合によっては余暇活動にかかるお金もあります。こうした実態は、主介護者にしかわからないことです。そうすると別居家族は、その収支が見えにくいわけですから、そこに不信感を持ってしまいます。

大概は「親の年金をどれだけ使い込んでるのか」という初歩的な疑念からはじまります。それが「車買い替えるお金あったっけ?」「嫁(よそ者)の立場で我が家の財産に手をつけるな」「遺産は当然等分ですからね」という具合に発展していくケースが多いです。

これに対して「それなら、お金はいらないから、介護はあなたたちがやって下さい」という想いが、主介護者の本音としてよく聞かれます。信頼で成り立てば良いのですが、お金に関することはデリケートです。特に親の遺産については、あらかじめルール化するなど、透明性を確保する話し合いが大事です。

4. 在宅介護の生活を勝手にジャッジする家族

これは主介護者だけでなく、要介護者にとっても一番の面倒です。要介護者たちの多くは、自宅で暮らし続けることを望んでいます。住み慣れた我が家で、家族に囲まれているいつもの生活に安心します。

介護職や看護師、かかりつけ医、ご近所さんやいきつけのお店など、要介護状態になっても馴染みの関係の中で生きています。そうした中で、要介護者や主介護者からしてみたら「些細なアクシデント」にすぎないことを針小棒大に取り上げ、施設に入れろ、病院へ入れろと意見をする家族がいます。

確かに、大切な要介護者のことを思えば、在宅生活にはリスクがあります。しかし、施設だから安全・安心で幸せなのかといえば、そうは言い切れません。転倒させないために縛られたり閉じ込められたり、鎮静剤を投与されることだってあるのです。

特に、認知症の方であれば、環境を変えたことで一気に病状が進行して、入所後わずかの期間で他界することも現実には起きています。

もちろん、主介護者が潰れてしまっては本末転倒ですから、自宅に住み続けることだけが正しいと主張するつもりはありません。しかし、当事者たちの実態を冷静に把握し、しっかりとした話し合いも持たずに、一方的にリスク面からだけのジャッジを下すことはナンセンスです。

介護の負担を負えないならば、主介護者に敬意を持って接すること

ここで取り上げたこと以外にも、主介護者を追い詰める別居家族の行動はたくさんあります。いずれにせよ、まずは、毎日の介護を担ってくれている主介護者に敬意を持ち、その上で一緒に介護生活を考えていこうとすることが、別居している家族のとるべきスタンスの第一歩です。

中には悪どい主介護者もいるかもしれません。しかし、別居家族が最初から主介護者を信頼しない形で臨んでは、改善できることも、こじれるだけです。それでも主介護者に問題があると思うなら、自分が、要介護者の介護を全面的に引き受けるべきでしょう。

要介護者のためにと思った善意からの行動でも、その結果が悪ければ、意味がありません。大人は、意図よりも結果がものをいう世界で生きているのですから。とにかく、自分が、要介護者の幸せな生活にコミットするだけのリソース(介護にかかるお金、介護をする時間)を提供できないなら、基本的には主介護者の判断を尊重するしかありません。

よくわからないならば、1ヶ月だけでも構わないので、実際の介護を経験してみてください。主介護者の苦労と、そこにかかるリソースの大きさ、そして精神的な負担がいかなるものか理解できるはずです。全ては、この理解があった上での、別居家族としての介護への関わりであるという認識が必要です。

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