KAIGOLABの最新情報をお届けします。
なんらかの理由で親が入院することになり、退院させるということは、多くの人に起こることです。退院のとき「え、こんな状態で退院なの?」という気持ちになったとしても、医者も退院と言っているし、仕方がないと考えても無理はありません。
運がよければ、その病院に医療ソーシャルワーカーがいて、相談を受け付けてくれた結果、要介護認定の申請をしたり、回復期リハビリテーション病棟への転院ができたります。しかし、こうしたケースは、決して多くはないと思われます。
KAIGO LAB 編集部の中で聞いてみたところ「今から思えば、もっと早く要介護認定の申請をするべきだった」という意見がほとんどでした。人によっては、要介護認定をせずに、3年以上、自分でなんとかしていたというケースもありました。
国際的に見れば、日本の社会福祉のレベルは高いです。しかし、一つ弱点があります。それは「自分は、この福祉サービスを使いたい」という具合に、こちらから申請をしなければ、そうした社会福祉を使えないという点です。助けが必要な人であっても、社会福祉の知識がなければ、それを使えないというのが実情なのです。
読売新聞の記事(2015年12月21日)によれば、働く世代の末期ガンにおいても、6割以上の人が介護保険を利用していないそうです。理由は、単純に「使えることを、知らなかったから」というものでした。以下、一部引用します。
がん患者は、死期が近づくと自力で起きあがるのが困難になったり、歩けなくなったりする。そのため余命6か月以内と診断された末期患者は、介護認定を受けた上で電動ベッドや車いすの貸し出し、訪問入浴サービスなどが利用できる。(中略)集計によると、64%が介護認定の申請をしなかった。また、介護認定されても低く評価されることがあり、39%が「要介護1」以下で、ベッドなどの貸し出しを受けるには不十分な認定だった。「介護保険が利用できる」という情報は、「自治体から聞いた」が最も多く、主治医、看護師、相談室の割合は、いずれも「自治体」の半分程度だった。
この調査結果は、働く世代の末期ガン患者を看取った200人の人に対するものです。調査人数(サンプル数)が少ないので、これだけで日本全国の話とすることはできません。とはいえ、参考になる調査です。
病院の経営も厳しいので、医療ソーシャルワーカーを置けないところは多いでしょう。であれば、せめて、日本の病院の待合室には、地域包括支援センターの紹介ポスターなどを掲載しておいてもらいたいです。
次に、企業の経営者や人事部員は、ガンになってしまった従業員を特定できる地位にあります。それと知ったら、本人や家族に対して、要介護認定の申請と、日本の介護サービスについての情報をきちんと伝えてもらいたいところです。
そして最後に、日本の義務教育には、社会福祉一般、特に介護に関する情報を入れる必要があるでしょう。一般論ばかりではなく、とにかく、家族が重い病気になったら、地域包括支援センターや自治体の介護窓口などに相談に行くということは、誰もが知っておくべきことです。
※参考文献
・読売新聞, 『働く世代の末期がん患者、6割が介護申請せず』, 2015年12月21日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。