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認知症について、対応する家族の困難についての調査があります(黒澤, 2015年)。その中で、まず、認知症の要介護者を在宅介護するときの困難に関する結果が、示唆に富んでいるので、以下に示します。
先の調査結果から見えてくることは、個別に様々な困難はあるものの、その多くに共通するのは、ストレスと休息に関することであることが見えてきます。きちんと自分の時間を確保して、また、睡眠時間を覚悟しつつ、ストレスを解消していくという部分がとても大事なのでしょう。
要介護者を一時的に預かってもらったりして、その間に、介護者(家族)は休息をとったり、自分の時間を覚悟したりすることを、特に「レスパイト」と言います。この調査結果からは、認知症の要介護者を介護する家族のためには、この「レスパイト」がどうしても必要ということがわかります。
こうした様々な困難に対して、家族は(no.1)介護の専門職に相談している=80.4% (no.2)家族に相談している=71.6% というのが実情です。また、今後望まれるサポートとしては(no.1)認知症対応サービスの充実=76.5% (no.2)相談窓口の充実=75.1% という結果になっています。
認知症の症状がみられてから、どの時期に相談したいかという質問に対しては(no.1)発症後すぐ=58.4% (no.2)1年未満=26.1% (no.3)1~2年=14.7% という結果になっています。できるだけ、早いうちに相談できると良いことがわかります。
実際に、介護の専門職に相談できている人が多いことから、この面では、介護業界の環境整備はそれなりに整っていることが推測されます。もちろん、今後もサービス品質の向上などは必要になるのでしょうが、形にはなっています。
認知症の介護で大変なのは、とにかく、なにかと対応に時間をとられてしまうことです。アメリカの介護でも「レスパイト」が重視されていますが。日本でも、ただ「レスパイト」が受けられる環境を整備するだけでなく、そこに財源をつけて、実際に「レスパイト」が活用されることを目標としていくべきでしょう。
今後、日本でも認知症が増えていきます。このとき、対応する家族の時間が奪われるということは、その時間があれば起こった消費活動と、その時間が労働にあてられれば生まれた生産活動が阻害されるということです。それは結果として税収を押し下げる要因にもなるのですから、ここへの財源配布は「投資」になるはずです。
※参考文献
・黒澤直子, 『認知症家族介護者における困難への対処 ~家族会への調査から~』, 人間福祉研究, 2015.18, 107-114
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