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入院は危険という認識を持っておこう(廃用症候群)

入院は危険という認識を持っておこう(廃用症候群)

大事をとって入院したほうがいい・・・という危険

日本の医療レベルは、世界的にみても、相当高いということは、広く知られていると思います。献身的な医師や看護師はもちろん、病院スタッフもまた、高い倫理観を持っていることが多く、日本の病院は、安全だけでなく、安心を届けてくれるところになっています(もちろん例外はありますが)。

そうした背景からか、高齢の親が病気になった場合、入院が最善の選択だと考える人も多数います。しかし、ヘルスケア業界の常識では、入院は必要悪であって、可能ならできる限り避けたい選択なのです。この点についての誤解は、大きなリスクになるので、強調されるべきところです。

入院は、命の危険がある状態の患者を救うための手段です。そのため治療中は、トイレに行くことはもちろん、起き上がることさえできないというのが普通です。入院では、なんらかの手術がなされることが多く、手術後もしばらくは安静の状態に置かれるでしょう。

しかし、人間というものは、ちょっとの期間でも、運動をしないだけで、多くの筋肉を失う生き物なのです。コペンハーゲン大学健康加齢センターのアンドレアス・ヴィジョルソ氏に寄れれば、高齢者の場合、2週間運動をしないと、筋力が23%も低下するそうです(糖尿病ネットワーク, 2016年)。

命を救うためには、安静にしている必要があります。しかしその間に、多くの筋力を失ってしまえば、特に高齢者の場合は、そのまま寝たきりになってしまう危険性が高まるのです。専門的には廃用症候群(disuse syndrome)と言って、体内を循環する血液量が減ったり、全身の持久力が減ったりもします(牧田, 埼玉医科大学)。

退院後に注意すべきこと

先にも述べたとおり、入院には廃用症候群のリスクが伴うことは、ヘルスケア業界では常識です。しかし病状によっては、そのリスクがあっても入院が必要ということもあります。ここで、患者の家族としては、入院で安心してしまわないことが重要です。

入院中には、とにかく筋力が低下します。高齢者の場合は、そうして失った筋力を取り戻すことが、退院後の大切な課題となります。医師や看護師は、それを教えてくれることもあるかもしれませんが、忙しいので「ご退院、おめでとうございます」以上のことは伝えてくれない可能性もあります。

医師や看護師から、特別な指示がなかったとしても、とにかく、高齢者の場合は、退院後のリハビリは強く意識してください。理学療法士や作業療法士などを見つけ、相談をすることを怠ってしまえば、一気に重たい介護が始まってしまうかもしれないのです。

ここで、リハビリを受けるためには。要介護認定を受けている必要はありません。保険が効かないので、全額自費になりますが、保険外のリハビリで検索をすればわかる通り、現在、介護が必要というほどではなくても、リハビリを受けることは可能なのです。

こうしたリハビリのためのお金をケチってしまうと、後で、重たい介護となってしまった場合、より大きな負担が必要になるかもしれません。保険という意味もかねて、高齢者が長期で入院した場合、せめて、相談だけでもしておくべきだと思います。

※参考文献
・牧田茂, 『廃用症候群の予防 体力のおとろえ』, 埼玉医科大学
・糖尿病ネットワーク, 『たった2週間の運動不足で筋肉は大幅減少 戻すのに3倍の時間が』, 2016年1月8日

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