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あるヘルパーから聞いた話です。依頼されて要介護者(利用者)の自宅に行ったとき、要介護者がネコを飼っていると、怖くなるそうです。ネコが嫌いということではなく、過去にネコが原因で、要介護の度合いが上がってしまったケースを複数経験したことがあるからです。
ネコは、飼い主に甘えるとき、足元にすりよります。首のところを、飼い主の足元に押し付けるのです。このとき、高齢者がネコにつまずいて、転倒してしまうことがあるのです。転倒については、過去にも記事にしています。
骨や筋肉(ロコモ)が弱っている高齢者にとって、転倒は非常に危険なことです。日常生活において、高齢者が救急車で運ばれる事例の8割までもが、転倒によります。転倒がきっかけで要介護になることもありますし、要介護の度合いが上がってしまうこともあります。
しかし、一般に広がっている転倒防止策としては、段差を無くしたり、電源コードを整理したり、床をすべりにくくしたりといったことが多く、ネコに注意というものは、まず見かけません。本当のところは、どうなのでしょうか?
ペットによる転倒の統計調査は、日本ではまだほとんどありません。例外的に広島県の獣医師学会などが調査している程度なのが現状です。これに対して、アメリカでは疾病対策センター(CDC)が調査報告を行っています。2009年のロイターの記事を、以下に引用します(太字はKAIGO LAB)。
米国では、飼っている犬や猫が原因で転倒し、ねんざや骨折の救急処置を受ける人が、1日当たり240人ほどいることがわかった。米疾病対策センター(CDC)が26日、発表した。(中略)米国では毎年約800万人が救急外来で転倒によるけがの治療をうけているが、そのうち推計8万6600件は犬や猫が原因だったという。
また、ペットによる転倒でけがをする確率は、女性の方が男性よりも2.1倍高かった。転倒の原因としてはつまずきが最も多く、犬による転倒の約31%と猫による転倒の66%を占めた。犬による転倒の21%は、引っ張られるか押されたことが原因だった。
この引用記事から、ネコがいると怖いというヘルパーの直感は、かなり正確であることがわかります。犬よりもネコによるつまづきのほうが多いようです。また、注意したいのは、男性よりも女性のほうが危ないという点です。犬も、散歩させるときに引っ張られて転倒することがあり、これについても認識しておく必要があるでしょう。
ペットの存在によって、精神的に癒されたり、世話をする中で身体を動かすきっかけにもなります。アニマルセラピーという心理療法があるほどですから、ペットがいることには良い面もたくさんあります。ただ、高齢者にとってペットの存在は、転倒リスクとも直結しているということは、忘れないでおきたいですね。
※参考文献
・ロイター, 『ペットによる転倒でけが、毎年8万件に=米調査』, 2009年3月27日
・ 田丸政男, 『広島県におけるペットが関係した人の転倒事故についての予備調査』, 広島県獣医学会雑誌, No.26(2011年)
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