KAIGOLABの最新情報をお届けします。
コンビニ業界は、セブンイレブンの一人勝ちと思われているところがあります。しかし、これをローソンが少しずつ追い上げはじめていることに、気づいているでしょうか。長年、セブンイレブンに続く2位の地位にあったローソンは、ファミリーマートとサークルKの合弁により現在は3位になっています。
当然、ローソンとしては2位の奪回から1位を狙っているわけですが、その軸となる戦略は「マチの健康ステーション」です。かつてのローソンの「マチのほっとステーション」という方向性は、2013年に、今の「マチの健康ステーション」に変更されています。
ローソンは、ナチュラルローソン、ローソンストア100、ローソンプラスなど、差別化戦略を取ろうとしています。こうした多様性の中にも「マチの健康ステーション」という軸で全体のブランディングを統合しています。そして、そうしたローソンの一つに、介護ローソン(ケアローソン)があります。
高まる介護ニーズに対して「マチの健康ステーション」たるローソンが介護領域に参入するのは当然のことでしょう。問題は、それが本当にローソンを1位の地位まで高める主軸になりえるのかという部分です。
朝日新聞の報道(2019年2月7日)によれば、ローソンは、19店目となる介護ローソン(ケアローソン)をオープンしています。この報道では「各地に続々」というポジティブな報道になっていますが、もともとローソンは、2017年度までに全国30店舗まで増やす計画を持っていました。
日本全体の、介護支援へのニーズは高まっています。それにも関わらず、介護ローソンの出店計画には、明らかな遅れがみられます。その本当の背景については知る由もありませんが、もし、大成功しているのなら、競合のコンビニもこの分野に参入しているはずです。なんらかの理由で、苦戦していることは明らかです。
まず、すぐに思いつくのは、介護事業者との連携の難しさです。介護ローソンの介護支援部分は、ローソン独自ではやれないはずですから、そこには当然、他の介護事業者が入り込みます。ここでは、かなり面倒な、地代家賃や各種コミッションの調整があります。
介護ローソンの存在に助けられている人々も多数いるでしょう。しかしおそらくは、収益性が担保できていないのではないかと思われます。単純な話として、もし仮に、介護ローソンが、普通のローソンよりも収益性が高いのであれば、ローソン全店舗が介護ローソン化していてもおかしくないのですから。
介護業界の人材不足は、有効求人倍率にして5倍というレベルで深刻です。そしてコンビニ業界も、人材不足に悩んでいることは、誰もがコンビニを利用するときに感じることでしょう。人材不足に悩む2つの業種が1つになるということで、この問題は改善されるのではなく、むしろ深刻なものになっている可能性があります。
介護業界は、いつくるかわからない顧客を、カウンターに座って待っているような余裕はありません。むしろ断らなくてはならないほど、仕事の依頼が入ってきます。そうした状況にあって、貴重な介護人材を、コンビニに立たせている余裕のある介護事業者は少ないはずです。
仮に、そうして介護人材を確保できたとしても、その介護人材が辞めてしまえば、介護ローソンとして安定的なサービスを提供することができなくなります。ここには、介護人材の維持コストが発生するわけで、それがコンビニとしての収益性を下げてしまう可能性があります。
ローソンとしては、セブンイレブンとの差別化のために「マチの健康ステーション」としてのポジショニングを変更することは(まず)ありえません。「マチの健康ステーション」であれば、介護を無視することはできないはずだからです。問題は、そのロマンが、本当にソロバンにつながるかという部分でしょう。
※参考文献
・朝日新聞, 『コンビニで気軽に介護相談を ケアローソン、各地に続々』, 2019年2月7日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。