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イギリスがEUを離脱すれば、イギリスの介護は成立しない?

イギリスがEUを離脱すれば、イギリスの介護は成立しない?

イギリスの介護事情

イギリスの介護事情は、労働者という側面からは、日本と似ているようです。毎日新聞の報道(2019年1月15日)によれば、イギリスの介護職は、年間の給与は2万ポンド程度(約280万円)で、そうした介護職は、イギリス全体で134万人いるそうです。

日本の介護職もまた、待遇の悪さが問題となっているほか、人数的には、約200万人います。ただ、イギリスの総人口は日本の約半分(約6,600万人)ですから、人口1人あたりの介護職の数は、イギリスのほうが日本よりも多いようです。

そんなイギリスでは、介護職の16.6%が外国人の労働者です。これに対して、現在のところ、日本の介護職に占める外国人労働者の割合は1%にも満たないものです。ただ今後は、日本の介護現場にも外国人が多数やってくることは、すでに決まっていることです。

EUを離脱した場合

イギリスがEUを離脱した場合、特殊技能を持たない年収3万ポンド(約420万円)以下の労働者は、労働ビザが取得できず、基本的には国外への退去が必要になります。そうなれば、現在16.6%となっているイギリスの外国人の介護職は、イギリスにいられなくなります。

この話が現実となった場合、イギリスでは、2026年に35万人の介護職が不足することになるそうです。日本では、2025年には38万人が不足すると予想されているわけで、こうした点も、よく似ています。だからこそ、日本でも、外国人の介護人材受け入れが進んでいこうとしているわけです。

イギリスが本当にEUを離脱する場合、日本の近未来として、外国人の受け入れがない場合の介護業界がどうなるかの前例となります。逆に、イギリスがEUを離脱しない場合、日本が外国人の介護職を受け入れた場合の未来の前例になります。日本とイギリスは、どちらも島国という特徴があるところも見逃せません。

世界の介護現場における外国人労働者

その他のOECD諸国の介護現場における外国人労働者の割合は、イタリア(72%)、ギリシア(70%)、オーストラリア(33%)、カナダ(23%)、アメリカ(23%)、スウェーデン(13%)、デンマーク(11%)、オランダ(8%)といった具合になっています。先進的な福祉国家と言われる北欧では、比較的、外国人労働者の割合が小さくなっています。

こうして外国人労働者の受け入れ状況を見ると、世界的には、介護現場における外国人労働者がいなければ、介護は成立しないということがわかります。こうした外国人労働者は、国際的な奪い合いとなっていることも、簡単に理解できます。

日本が、これから外国人労働者の受け入れを開始したところで、こうした奪い合いのある環境では、思い通りに外国人労働者の確保はできないと考えられます。賃金の安い外国人労働者を受け入れていく方向だけではなく、介護業界の待遇を改善していく方向での調整も必要でしょう。

※参考文献
・毎日新聞, 『EU離脱、英国の介護現場に深刻な影響 東欧からの労働者に依存』, 2019年1月15日
・国際厚生事業団, 『外国人介護士の現状』, 2017年4月20日

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