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医療は人生をよりよくするためのツール

医療は人生をよりよくするためのツール

医療の分類

皆さんは、病気やケガをしたとき、どういった選択をされますか?病気やケガの程度にもよりますが、自分で判断がつかない場合、専門家による治療を求めて、何らかの医療手段を用いるのではないでしょうか。

そうした医療手段にはいくつかの選択肢があります。それらは(1)外来医療:病院や診療所の外来に通う(2)入院医療:入院する(3)在宅医療:医療の専門職に自宅にきてもらう、という、医療手段を受ける場所によって、大きく3つに分類されます(今後は遠隔医療も普及していくので、いずれは4つになります)。

この3つの中では、一般には(1)と(2)に馴染みがあると思います。誰もが(1)の外来を使ったことがあるはずです。また、自分自身の経験ではなくても、身内の誰かが(2)入院したことがあるという人も多いでしょう。では(3)の在宅医療についてはどうでしょう。この経験のある人は、少ないと思われます。

あまり身近ではない在宅医療という選択肢

今回は、3つ目のあまり身近ではない(3)在宅医療について少しだけ細かく考えてみます。在宅医療は、その名の通り、自宅(専門の医療機関の外)で受けられる医療のことを指します。この在宅医療は、さらに2つに分類されます。それらは往診と訪問診療です。

まず往診は、医師が診療上必要だと判断した場合、イレギュラーな形で、自宅に訪れて診療するというものです。ポイントは、こうした診療はイレギュラーな形で発生することです。医師が必要と判断しなければ、往診は発生しません。病院外で行われる救急医療と考えると、理解しやすいでしょう。

これに対して訪問診療は、病気やその症状によって通院できなくなった人に、その人や家族が同意の下、計画的かつ定期的に自宅を訪れて診療するというものです。こちらのポイントは、往診とは異なり、イレギュラーではないという部分になります。病院外で行われる入院と考えると、理解しやすいでしょう。

日本の医療における歴史的背景

戦後の1950年頃、日本の医療環境は、さまざまな病気への対応が安静第一とされていました。また、当時は皆保険制度がなく、医療を安価に受けられない状況だったのです。そして、そもそも入院できる病院が少なかったことも、現代の医療環境とは大きく異なります。

こうした背景から、1950年頃の日本では、病院ではなく、自宅で療養生活を送っている人がほとんどだったのです。そうした療養生活中に、何か緊急の医療的対応が必要になった場合、医師が往診にて対応をしていました。日本の在宅医療は、このころ発達しています。

その後、日本の医療環境は急速に発達し、病気になったら病院に代表される医療機関に足を運ぶことが一般化していきました。いまでは、それが当たり前のことになっていますが、そもそも日本の近代的な医療は、往診や訪問診療という形で始まっているという部分は、意外と忘れられています。

往診や訪問診療というと、まだまだ環境が整備されていなくて不安という人もいるかもしれません。しかしこれらは、実は古くて新しい話であって、改善すべき点は多数あるものの、特に年配の人からすれば、それほど違和感のあるものではないわけです。

自分の人生に必要な医療を選択する

元気で医療を受けずに過ごすのが一番ですが、なかなかそれも難しいです。2030年には、日本の総人口は約1億1,662万人と予測されています。その内の31.6%は、65歳以上の高齢者です(総務省の人口推計より)。ご存知のとおり、日本の高齢者は、これから急速に増えていきます。

高齢者は、現役世代よりも、より頻繁に医療を必要とします。しかし外来医療や入院医療は、医療の財源不足などからそう増やせません。これは、外来医療や入院医療を気軽に選択できなくなる未来が、すぐそこに迫っていることを意味するでしょう。そのときの日本では、往診や訪問診療がより一般化しているはずです。

積極的治療が終わりどこかに転院を決めなければならないとき、自由がない入院生活に苦痛を感じたとき、お金がなく入院が難しくなったとき、治療以上に家族との時間や自分の時間を大切にしたいとき・・・在宅医療を選択するタイミングは、これから、誰にでもやってきます。

自分や家族が病気やケガをしたとき、どのタイミングで、どこで、誰と、どんな風に過ごしたいのかを考えるべき時代になってきています。外来医療、入院医療、在宅医療、いずれの医療も、自分の人生をより良くするためのツールです。これからは、そうしたツールを主体的に選ぶ必要性が増していくと考えられます。

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