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妻が弱ったら、自分が助けてあげたいと考える男性は多いようです。オリックス・リビングが行った調査結果を、産経新聞が報道しています。以下、その産経新聞の記事(2018年12月24日)より、一部引用します。
夫は伴侶を介護したいが、妻はそうでもない-。40代以上に配偶者の介護に関して聞くと、妻の介護をしたい男性は53・4%を占めたが、夫を介護したい女性は30・9%と、大きな差があることが民間調査で分かった。担当者は「女性は介護を現実的な問題と捉え、体格差など具体的な難しさを想定しているのではないか」と分析している。(後略)
妻の介護をしたい男性は53.4%なのに対して、夫の介護をしたい女性は30.9%という結果になっています。かなりの開きがあるのですが、この背景は「女性は冷たい」ということではなく、もっと様々な要素がありそうです。
あくまでも仮説ですが、介護についてどこまでリアルに想像できているかには、男女差があるのではないかと思います。実際の介護を見たことがあったり、自分の友達に介護業界で働いている人がいたり、親から介護について聞かされていたりすることには、男女差があるかもしれません。
実際の介護を知っていれば、自分が直接手を動かして行う介護の大変さだけでなく、むしろ自分がやらないほうがよいことも認識されます。たとえば、排泄介助や入浴介助は、可能なら、同性に行ってもらいたいと考える人は多いものです。
長年連れ添ったパートナーの介護をしたいかどうかではなく、パートナーの幸せを願うという点では、男女差はないかもしれません。ただ、介護についての質問となると、そこに男女差が生まれているとするなら、背景には、こうした介護についての具体的な理解の差がある可能性があります。
誰かの介護をするとき、その相手に「申し訳ない・・・」と思わせてしまうと、よくありません。人間には、誰かに何かをしてもらうと、それを負債に感じ、なにかお返しをしたくなるという性質(返報性)が備わっています。相手に「申し訳ない・・・」と思わせることは、そうした負債を相手に与えることになってしまうのです。
それが、数日の看病であれば、男女ともに、パートナーのそばにいてあげたいと考える人が増えるでしょう。しかしそれが、数年〜10数年の介護となると、この返報性からしても、介護をされるほうの心理的な負担が大きくなるのは明白です。これも、パートナーの介護をしたいかどうかの男女差の背景かもしれません。
介護の一部でも、介護のプロにお願いをすることは、そうした心理的な部分でも負担を減らすことにつながります。介護のプロは「申し訳ない・・・」と言われても「仕事ですから」と返事をすることができます(実際には、仕事の枠を超えて献身的な介護をしてくれるプロが多いのですが)。
夫婦も高齢になれば、介護について話し合っておくことが必要になります。特に、お互いがまだ元気なうちに、考え方を共有しておくことは大切です。それはたとえば、介護のプロに介護の一部でもお願いするのは、むしろお互いのことを大切に思えばこそといったことです。
そもそも介護には、様々な専門性が求められます。糖尿病をはじめとした持病があれば、それに合わせた調理も必要になります。これまでほとんど調理などしてこなかった男性の場合、これだけで、相当な負担になるでしょう。頑張ったところで、妻が美味しいと感じられるレベルの調理ができるかも疑問です。
パートナーの介護をしてあげたいと考えるかどうかに男女差がある、その本当の理由はわかりません。ただ、男女という大きな枠組みではなく、自分と自分のパートナーの間の認識に差があるのは、良いことではないでしょう。この差は、夫婦の話し合いによって埋めることができると思います。
※参考文献
・産経新聞, 『夫の介護したい妻3割 男性と大差、ロボには期待』, 2018年12月24日
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