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高齢者の賃貸住宅問題への、旭化成ホームズの取り組み

高齢者の賃貸住宅問題への、旭化成ホームズの取り組み

高齢者向けの賃貸住宅がない!

高齢者が、賃貸住宅を借りられないという問題は、改善の見通しが立っていません。昨年10月に改正された住宅セーフティーネット法を軸とした施策も、その効果に疑問符がつきはじめています

本来であれば、この領域は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)がカバーすべきところでした。しかしサ高住は、要介護者の増加とともに、実質的に、介護施設になってしまっているというのが実情です。

介護施設と、一般の賃貸住宅の中間的な領域が、スッポリと抜け落ちているのです。実は、この領域で、事業を伸ばしているのが、旭化成ホームズです。以下、住宅産業新聞社の記事(2018年9月4日)より、一部引用します。

旭化成ホームズ(東京都新宿区、川畑文俊社長)は23日、首都圏で展開中する元気な高齢者向けのバリアフリー賃貸住宅「ヘーベルヴィレッジ」の累計戸数が300戸を超えたと発表した。

サ高住が介護施設化してしまった現在では、元気な高齢者が安心して移り住める広めのバリアフリー賃貸住宅の数が少なく(中略)同社は首都圏のアクティブシニア向け賃貸市場でニッチトップの座を確立し、早期に1千戸を達成したいとした。

これから新規参入もありえるか?

この領域がスッポリと空いていることは、多くの住宅事業者は認識していたと思います。ただ、バリアフリー化などをすればコストがかかるだけでなく、顧客が高齢者に絞られてしまうため、リスクもあって、なかなか参入できていないのが実情でしょう。

そうした中、この旭化成ホームズの取り組みが成功しているというニュースは、大きな注目を集めています。近い将来、似たようなビジネスモデルを展開する住宅事業者も増えていくことが予想されており、意外と、高齢者の賃貸住宅問題は、解決の方向に行く可能性も出てきました。

それと意図されていなくても、これは、実質的な官民連携の事例です。これまで官僚主導で、介護施設やサ高住が整備されてきたわけですが、そうした整備によって、空いている領域も明確となり、そこで民間が活躍できているからです。

介護施設やサ高住を整備した官僚の立場からすれば、あまり面白くない話かもしれません。ただ、結果として、高齢者の状態によってサービスレベルが異なり、シームレスな住宅が提供できることになったことは、国民にとって幸運なことでした。

それでもノーマライゼーションの課題は残る

それでも、意地悪に見れば、こうした状況は、高齢者が、特定の場所に隔離されていることと変わらないかもしれません。それは、社会福祉におけるノーマライゼーションの理想からすれば、あまり良いこととは言えないのです。

こうした、高齢者専用の設備が整えば整うほどに、高齢者は、他の年代の人々との交流を失っていきます。かといって、現代社会は、隣近所と仲良くできるような場ではないので、こうした高齢者専用の設備に意味がないわけでもありません。

今後は、高齢者専用の設備といったハード面が整備されていき、そこに、多世代交流というソフト面での競争が発生していくでしょう。民間の参入には、競争という経済原理が働くため、そうした問題が放置されていくことはありません。期待して、観察していきたい分野です。

※参考文献
・住宅産業新聞社, 『旭化成ホームズ、シニア層向け賃貸が好調=市場開拓、ニッチトップへ』, 2018年9月4日

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