KAIGOLABの最新情報をお届けします。
孤独は、肥満や喫煙よりも体に悪いなど、様々な分析がなされてきた、大きな害悪です。イギリスでは、孤独担当大臣というポストが生まれるなど、孤独は社会課題として、世界中で認識されはじめています。
では、こうした孤独の害悪は、寿命に対してどのような影響があるのでしょう。東京都健康長寿医療センター研究所は、孤独だけでなく、社会的孤立と合わせた長年にわたるデータを分析し、このほど発表しています。以下、産経新聞の記事(2018年9月19日)より、一部引用します。
日常生活に問題がなくても、他人との交流機会が少なく外出もあまりしない高齢者は、そうでない人に比べ、6年後の死亡リスクが2・2倍になるとの研究結果を、東京都健康長寿医療センター研究所チームが発表した。
これまで、他者との接触が少ない「社会的孤立状態」や、外出頻度が低い状態だと高齢者の死亡率を高めることが知られていたが、これらが重なった“負の相乗効果”については明らかになっていなかった。(後略)
このニュースだけ見ていると、孤独は、6年後に人を殺すというように考えるかもしれません。しかしそれは誤解です。実際には、この6年の間に徐々に弱っていき、フレイルになり、要介護状態を経て、死に至るのです。この6年の間には、介護というイベントが、ほぼ必ず入っています。
孤独のまま、その人を放置しておくと、その周辺は、厳しい介護に苦しむことになる可能性が高いのです。そうなれば、税金や社会保険料などの公費が発生するだけでなく、周辺の人々の生産性が、介護によって下がることにより、税収も下がるという未来が待っているわけです。
イギリスは、これに気づいているからこそ、孤独担当大臣というポストを作ったのでしょう。孤独を放置するような社会は、そもそも存在価値がないということでもあります。孤独を放置すれば、その社会の維持コストは上がっていき、維持できなくなるということです。
孤独への対応は(1)対象者の特定(2)誘い出し(3)社会関係が築ける場への参加、といったステップを踏みます。ここで、一番難しいのは(2)誘い出しのステップです。いちど引きこもってしまった人を、外に連れ出すことの困難を想像してみてください。
実は(3)社会関係が築ける場というのは、むしろ余るほどに多数あります。自治体が予算をつけていたりしますが、もう、ここは十分です。お祭り騒ぎに集まってくるのは、すでに孤独ではない人だったりします。ですから、孤独への対策としては、既存の場は、ほとんど機能しません。
本当の問題は、孤独になってしまっている人が、そうした場に出てこないという部分です。これを誘い出すのは、非常に難しく、ノウハウも限られているという認識が必要なのです。このノウハウを共有し、さらに発展させていくような取り組みが必要です。日本にも、孤独担当大臣のようなものが求められています。
※参考文献
・産経新聞, 『高齢者は交流も外出も大事 6年後の死亡リスクが2・2倍に』, 2018年9月19日
KAIGOLABの最新情報をお届けします。