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訪問介護の生活援助、注意しておきたいこと

訪問介護の生活援助、注意しておきたいこと

身体介護と生活援助、2つのサービスを理解しておきたい

介護保険制度の訪問介護は、大きく身体介護と生活援助の2つのサービスに分けられます。身体介護とは、食事、排泄や入浴等のサービスです。一方で、生活援助とは、掃除、洗濯、調理や買い物等を訪問介護員が支援するサービスです。

家事ができない状態が続くと、生活は乱れ、健康状態の悪化にもつながります。そうなると、生活意欲も後退してしまいます。要介護者(利用者)のいままでの生活習慣を尊重した介護職員による家事の援助は、様々な好影響をもたらす、日常生活を続ける上で、どうしても必要なサービスなのです。

一般に介護というと、身体介護のほうが想像されるものでしょう。しかし生活援助もまた、それを必要とする人にとって非常に重要なサービスであるという点について、一般にも広く認識されることが大事なのです。

生活援助の利用における3つの基本的な知識

生活援助を利用したいと考えたときに注意しておきたいことがあります。1っめは、要介護者が自分でできることは、できるだけ自分でやってもらうという方針を前提にしているということです。できないところのみを支援していきます。より詳しくは、過去の記事を参照してください。

2つめは、日常生活の範囲を超える家事の援助は、介護保険の給付対象にはならないということです。例えば、掃除の場合、大掃除に該当する行為、庭木の手入れや普段使わない部屋の掃除は対象外です。買い物も、近隣で済ますことができるにもかかわらず、遠くの店まで出掛けることも対象外となります。

3つめは、生活援助のサービスを利用したいと考えても利用できない場合があるということです。それは、同居家族(同居している家族)がいる場合です。基本的には、同居家族がいる場合、介護保険給付対象の生活援助サービスを利用することができません。同居家族がいる場合は、同居家族が家事をするという考え方に基づいています。

同居家族がいても生活援助が受けられる例外について

ただし、同居家族がいる場合、生活援助は絶対に利用できないということではありません。例えば、同居家族が障害や疾病等の理由により、家事を行うことが困難な場合は利用できます。加えて、同様の「やむを得ない事情」がある場合です。

家族が介護疲れで共倒れ等の、深刻な問題が起きてしまうおそれがある場合も、状況によっては「やむを得ない事情」と判断されることもあります。同居家族がいるから生活援助が利用できないと自己判断せず、担当のケアマネジャーに相談してください。

ただ、そうして生活援助を利用できることになった場合であっても、介護職員は、要介護者のための生活援助はできても、同居家族のための家事を(保険内で)行うことはできません。この点については誤解も多いので、特に注意してもらいたいところです。

例えば、母親(要介護者)が、いままでずっと息子さんの食事を用意していたとします。その母親の生活援助が認められたとしても、調理の援助で作れるのは要介護者である母親の分のみです。同じように、洗濯サービスにおいても、同居家族の洗濯物を洗濯することはできません。同居家族の使用する居室を掃除することもできません。

自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助

ただ、生活援助のサービスが利用できない場合、身体介護であっても、家事の支援を受けることができる可能性もあります。専門的には、訪問介護の「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」と呼ばれるサービスで、これは身体介護の領域に含まれるのです。

これは、要介護者の自立を後押しする観点から、安全に配慮しつつ寄り添って「共に行う」支援を指します。生活援助との大きな違いは、利用者自身が家事を積極的に行うのを、訪問介護員が支援するというスタイルであることです。通知『老計10号』には、これについて、以下のような具体例が挙げられています。その一部を紹介します。

・ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう、または思い出してもらうよう援助する。

・認知症の高齢者の方と一緒に冷蔵庫のなかの整理等を行うことにより、生活歴の喚起を促す。

・洗濯物を一緒に干したりたたんだりすることにより自立支援を促すとともに、転倒予防等のための見守り・声かけを行う。

・利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行うベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等

・利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りをしながら行う衣類の整理・被服の補修

少しの手助け、声かけ、見守りがあれば、家事ができる方にとっては、このサービスを利用することで、家事を継続することができます。これを繰り返すことで、1人で、できるようになる家事が増える可能性もあります。

また、訪問介護員が定期的に訪問することで、自分でできることは、次に訪問介護員が来る日までに終わらせなくてはという意識も芽生えるものです。そうして、生活のリズムが整っていくこともあります。このようなサービスがあることも知っておきたいです。

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