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老人クラブは、老人福祉法で定められた、社会奉仕、教養文化及び健康づくりなどを行うクラブ活動です。多くは(わずかですが)自治体からの助成金を受けており、公的にもサポートされている大切な活動です。現在、日本には10万以上の老人クラブがあり、会員数も500万人を突破しているとされます。
孤独だと、誰もが心身の健康を崩すということは、科学的にもわかってきている事実です。とはいえ、高齢者として現役を引退してしまうと、なかなか外出の理由もなくなってきます。そうしたとき、多少面倒があっても、老人クラブの存在は、多くの高齢者にとってポジティブに働いてきたはずです。
こうした組織の存在は、社会にとって大切な資本(社会関係資本)であり、欧米でもソーシャル・キャピタル(social capital)と呼ばれ、長く注目されてきました。10万ものクラブ活動を、ゼロから立ち上げようとしたら、どれだけ大変なことになるかを想像すれば明らかなとおり、老人クラブは、日本にとって非常に貴重なものだったのです。
そんな老人クラブが、現在、運営の危機にあるというニュースが入ってきました。せっかく、10万まで増えた老人クラブが、将来的には機能しないとなれば、大問題にも感じられます。以下、神戸新聞NEXTの記事(2018年2月12日)より、一部引用します。
お年寄りの数はどんどん増えている。それなのに、地域で活動する「老人クラブ」の会員は、どんどん減っている。新規加入が少ないため、クラブ内の“高齢化”も顕著だ。価値観が多様化した現代において「仕方がない」という声もある。一方で、老人クラブの運営は自治体などが支援し、地域社会で一定の役割を担ってきた。(中略)
「県老人クラブ連合会(のじぎくクラブ兵庫)」=神戸市中央区=によると、会員減少の理由の一つが「役員をしたり、行事に参加するのが負担という意見」だ。会員の高齢化が進んで役員の引き受け手がなく、組織が維持できなくなり、解散や休止をしたクラブもあるという。(後略)
たとえば、自分が60歳になり、老人クラブに勧誘されたとします。すると、そこでは自分の親と同じくらいの大先輩がいて、色々と指導されることにもなります。現代的な感覚からすれば、引退してもなお、縦社会の中に組み込まれるのは嫌な感じも受けます。
老人クラブ本来の目的は、社会奉仕、教養文化及び健康づくりなどを通して、高齢者が、心身の健康を維持することです。であるならば、既存の老人クラブが維持されることではなく、高齢者が、なんらかの社会活動に参加することが目的ということでしょう。
既存の老人クラブの会員には受け入れがたいことかもしれません。しかし本当は、老人クラブという、老人であることを共通点とした集まりは、社会的な役割を終えつつあると考えることも可能です。老人だけが一箇所に集まらなければならないというのも窮屈でしょう。
そもそも年齢制限を設けて、参加の可否が決まるような活動は、さすがに古いものです。むしろ、釣り好きの集まり、囲碁好きの集まり、カメラ好きの集まりなど、現代には様々なクラブ活動が、参加者の年齢を問わず、自然発生的に生まれています。
今後は、こうした自然発生的に生まれているクラブ活動の中で、新たな会員を募集しているところを自治体のHPなどで宣伝していくような形で、予算を使っていくべきだと思います。繰り返しになりますが、そこに年齢制限などないはずです。
もちろん、そうしたクラブ活動のどれにも参加できてない高齢者のために、マッチングを行うようなメタな活動も必要になってくるでしょう。ただ、既存の老人クラブの会員数が減ってきていることは、むしろ自然の流れかもしれないという視点も大切だと思います。
※参考文献
・神戸新聞NEXT, 『増える高齢者、減る「老人クラブ」 運営岐路に』, 2018年2月12日
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